シャープは、4.3インチ型のWQVGA(480×272画素)カラー液晶パネルを搭載するグラフィックス表示モジュールを発売した。冷蔵庫や電子レンジ、洗濯機といった白物家電機器への組み込み用途を想定して販売する。
シャープは、4.3インチ型のWQVGA(480×272画素)カラー液晶パネルを搭載するグラフィックス表示モジュールを発売した(図1)。冷蔵庫や電子レンジ、洗濯機といった白物家電機器への組み込み用途を想定して販売する。カラー液晶パネルとLEDバックライトのほか、グラフィックス処理回路を集積した自社開発のARMマイコンや、メモリ、外部インタフェース、電源、各種周辺部品などをまとめたモジュールである。グラフィックス回路搭載マイコンについては、同社の家庭用ウォーターオーブン「ヘルシオ」シリーズの最新ハイエンド機「AX-PX1」(2010年8月発売)に搭載したものだ。シャープはこのモジュールの量産を2010年10月に開始し、同年11月に出荷を始める予定である。
同社は、「家電のビジュアル化は今後も進んでいく。将来的には、ほとんどの家電にカラー液晶パネルが搭載されるようになるはずだ」(同社の電子デバイス事業本部 システムデバイス第2事業部 第4開発部で参事を務める生田英二氏)とみる。ただし現在のところ、白物家電の主流機種ではセグメント表示のモノクロ液晶パネルを採用するものが圧倒的に多い。「セグメントでは表現できないようなグラフィックスを使いたい場合に、ドットマトリクス表示のモノクロ液晶が使われる程度で、カラー液晶の採用事例はまだほとんど無い」(同氏)というのが現状だ。
その理由を同社は、カラー化が家電のユーザーに大きなメリットをもたらす一方で、メーカーにはデメリットが多かったからだと分析する。つまりこうだ。カラー液晶を活用したユーザーインタフェースを搭載すれば、分かりやすい操作ガイダンスを見せたり、直感的な操作が可能なタッチパネル機能を搭載したりできる。これらはユーザーにとっては大きなメリットになる。ただしメーカーにとっては、回路やソフトウエアが複雑化して開発工数が増える、組み込みシステムの処理負荷が大きくなる、部材コストがかさむなど、デメリットが多い。そこでシャープは、「こうしたデメリットがカラー化を阻む障壁になっている。これらを打ち消せば、普及が進むはずだ」(同氏)と考え、今回のモジュールを市場に投入した。
今回のモジュールでこれらのデメリットを解消できると主張する理由はこうだ。モジュール品なので、機器メーカー側で複雑な回路設計は不要である。そのまま機器に組み込めばよい。さらに、ARMマイコンに集積したグラフィックス処理回路は、ハードワイヤード回路で構成してあり、機器メーカーは複雑なソフトウエアを記述しなくても、簡単なレジスタ設定だけでグラフィックス表示が可能だ。例えば、エンドユーザーに「処理中」であることを知らせるために、グラフィックスを回転表示させる場合は、1枚のグラフィックスデータを用意し、その表示座標と回転角度を指定するだけで済む。複数枚のデータを用意してそれを次々に切り替えてアニメーション表示することで回転を表現するといった複雑なソフトウエア記述は不要だ。しかも、専用のハードワイヤード回路がグラフィックス処理を担うため、マイコンのCPUコアにかかる負荷を低く抑えながらも、スムーズな表示が可能になる。CPUコアのクロック周波数を低く設定できるので、消費電力も小さくて済む。
コストについては、次のように述べた。「ドットマトリクス表示のモノクロ液晶パネルを使う場合と比べて、液晶制御やグラフィックス表示を担う周辺回路のコストは変わらない。モノクロとカラーの液晶パネルの価格差だけだ。また、カラー液晶を使う場合に、機器メーカーがハードウエアとソフトウエアの構成要素を独自に調達したり開発してこのモジュールと同等の機能を実現しようとすれば、開発コストも含めて考えれば結局、モジュール品の3倍程度のコストが掛かってしまう」(同氏)。ただし、このモジュールを大量購入した際の具体的な単価は明らかにしなかった。サンプル価格は3万円である。
5V単一電源で動作し、消費電力は1500mW。なお、このモジュールに搭載したグラフィックス処理回路内蔵ARMマイコンは、「1チップグラフィックコントローラIC」として単体でも販売している。型名は「LR35504」である。
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