ノキアは2010年9月10日(現地時間)、マイクロソフトでビジネスアプリケーショングループ担当プレジデントを務めていたStephen Elop氏(=写真)を新たな社長兼CEO(最高経営責任者)として迎えると発表した。市場調査会社Forward ConceptsのアナリストであるSatish Menon氏はこのニュースを受けて、新CEOに就任するElop氏が今後直面するであろう課題として次の5つを挙げた。1つは、市場ニーズにより迅速に対応すること。それから、次の4点に再び注力することだ。すなわち、ハイエンドのスマートフォン、アプリケーションプロセッサ、アプリケーションストア、米国でのビジネスである。
ノキアのチェアマンを務めるJorma Ollila氏が9月10日の記者会見の中で、「現在ノキアは、極めて困難な状況に置かれている」と発言していることからも、新CEOのElop氏は厳しい状況下での就任となる。ノキアは、携帯電話機市場においてリーダー的立場にあるものの、アップルやグーグルなどが「スマートフォン」の定義を書き換えている中で、かつての市場シェアを失いつつあるのが現状だ。
アナリストのMenon氏は、「ノキアは、適切なコミットメントとリーダーシップにより、これまで培ってきた幅広いエンジニアリングのノウハウを土台として、最先端のスマートフォンを開発できる能力を備えている。ただし問題は、(それで獲得できる市場シェアが)少なすぎたり、(製品投入が)遅すぎたりはしないか、ということだ」と指摘する。
同氏によればノキアは、携帯電話機のトレンドが、オープンソースのウェブブラウザを使ったタッチスクリーン搭載型へと変化したとき、それに対する反応が遅れたという。「ノキアの製品開発サイクルは、ほかと比べて長期化する傾向がある」と指摘する。
さらに同氏は、「携帯電話機の巨人である同社は、ハイエンドスマートフォン事業の影響を特に受けやすい」と付け加えた。
同氏はまた、「ノキアはいまだに、世界市場における同社のシェアが40%であることをアピールしている。しかし実際のところこの世界シェアは、新興市場における利益率の低い低価格帯の携帯電話機によって獲得したものである。ハイエンド市場に関しては、ホームグラウンドであるはず西ヨーロッパ市場でさえも、ノキアのシェアは縮小し続けているのが現状だ」と述べている。
特にノキアは、モバイルプロセッサで大きく遅れをとっている。Menon氏は、「競合他社が『ARM Cortex A8』コアを搭載したスマートフォンを投入しているのに対し、ノキアはいまだに『ARM11』を使っている。ノキアは2010年9月14日〜15日に開催する『Nokia World 2010』において、新しいフラッグシップ端末『N8』を正式に発表する予定だが、そのN8でさえもARM11を採用している」と指摘する。
同氏は、「大手スマートフォンメーカーの中で、フラッグシップ端末にいまだにARM11プロセッサを使っている企業は、ノキアのほかは1社もないはずだ」という。
またノキアは、携帯電話機向けアプリケーションを販売する同社のオンラインストア「Ovi Store」を強化する必要がある。このオンラインストアは、現在のところアップルの「App Store」やグーグルの「Android Market」ほどには、開発者の注目を集められていない。Menon氏は、「ノキアは、サードパーティの開発者を大量に動員しなければならない。そのためには、ノキアのクロスプラットフォーム開発フレームワークである『Qt』が、重要なツールの役割を担うだろう」と指摘する。
同氏はさらに、「ノキアは、ハイエンドのマートフォンの売上高を大きくけん引している米国市場において、シェアの拡大に取り組む必要がある」という。
また、「Elop氏を招へいしたことは、ノキアが米国市場におけるシェア回復に取り組むという、同社内における最高レベルの意思表示だろう」としながらも、「ただしElop氏の経歴を見ると、同氏の強みは、現実的に必要性が最も高い消費者向け製品ではなく、むしろビジネス面にあるようだ。しかも、米国市場を実際にコントロールしている通信事業者と一緒に仕事をした経験も乏しいようだ」と指摘している。
ノキアがヘルシンキで開催し、新CEOのElop氏を紹介した記者会見では、Elop氏もチェアマンのOllila氏も、同社の過去の過ちや、同社の今後の取り組みの詳細について言及することを避けた。
Elop氏は、「課題やその解決策は、ノキアの社内では明確になっている。私の仕事は、それを実行することだ」と述べた。
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