クアルコムは、携帯機器向けに提供する同社の半導体チップに当面はNFC(Near Field Communication)機能を搭載しないと表明した。同社はNFCに取り組むエンジニアを抱えているが、NFC機能を搭載した自社チップの投入には至っていない。携帯電話機メーカーには、NFCチップセットについてはサードパーティから供給を受けるように働きかけているという。
NFCは、13.56MHz帯で動作し、「RFID」として知られる無線タグ技術をベースにした技術である。少額電子決済(マイクロペイメント)の手段として有効だとされており、すでにチケット販売や公共の交通機関の運賃支払いなどで実用化された事例もある。
NFC技術を携帯電話機に搭載し、電子財布として機能させるという構想が提言されてから、かなりの時が経っている。しかし、銀行と携帯電話事業者間で十分なコンセンサスが得られず、実用化が難航している(※EE Times Japan編集部注:本記事は、欧米での状況を伝えています。このため、日本国内とは必ずしも状況が一致しません)。しかしその一方で、アップルが次世代「iPhone」にNFC技術の導入を進めているといった噂や、ブロードコムがNFC技術の先駆的企業である英国のInnovision Research & Technologyを4750万米ドルの現金で近日中に買収するという情報など、NFC技術を搭載した携帯電話機の実現を期待させるニュースもある。
クアルコムヨーロッパでビジネス開発担当シニアディレクタを務めるBen Timmons氏は、同社のNFC技術の開発にまつわる状況を次のように説明している。「クアルコムが現在対応している無線通信技術は、GPSとBluetooth、無線LANだ。NFC技術の導入を望む企業(携帯機器メーカー)には、現時点はサードパーティの製品を利用してもらうほかない。当社はNFCのエンジニアを抱えているが、彼らは主にソフトウェアに取り組んでいる」。
クアルコムの投資組織であるクアルコムベンチャーズは2009年2月に、フランスのチップメーカーであるInside Contactlessに対して、400万ユーロ(約510万米ドル)の投資を実施した。さらに、クアルコムのモデムチップセット「Mobile Station Modem(MSM)」とInside Contactlessの複数規格対応NFCチップ「MicroRead」を組み合わせて、3G携帯電話機向けに2種類(UMTS方式とCDMA2000方式)のリファレンス・デザインを開発する計画も明らかにしている。なおInside Contactlessには、クアルコムのほかにも、ノキアやモトローラなども出資している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.