旭化成エレクトロニクスは、2.7mm×1.9mm×0.4mmと小さい量子型の非接触温度センサー(赤外線センサー)をエレクトロニクスの総合展示会「CEATEC JAPAN 2010」(2010年10月5日〜9日に幕張メッセで開催)に出品した(図1)。サーモパイルなどを利用して赤外線の光量を熱的に検出する方式とは異なり、InSb(インジウム・アンチモン)材料を使ったフォトダイオードで赤外線を検出する量子型である。
同社によれば量子型は、サーモパイル型に比べて感度と応答速度がともに高いという特徴があるものの、低温に冷却しておく必要があり、CANパッケージに冷却用の液体窒素を封入するといった手法が採られていた。そのため小型化が困難だったという。展示品は、常温でも赤外線センサーとして機能するように改良することで冷却機構を不要にし、チップ状の樹脂パッケージに封止できるようにした。
具体的には、フォトダイオード素子の膜構造を工夫した。そもそも量子型で冷却が必要だったのは、赤外領域に感度を持つInSbが狭バンドギャップ材料であるからだ。そのままでは常温でも励起状態になってしまい、赤外線の入射の有無によらず検出信号が出力されてしまう。これではセンサーとして機能しない。そこで旭化成エレクトロニクスは、励起したキャリアが出力電極に到達しないようにバリア層を挟み込む膜構造を採用することで、常温動作を可能した。
型名は「IR10100」で、すでに製品として出荷しているという。用途としては、人体の検出や、非接触の温度計のほか、光学フィルタと組み合わせればガスセンサーとしても利用可能だ。コストについては、「将来的には、サーモパイル型と同等まで下げられる」(同社の説明員)とコメントした。複数のセンサー素子を並べたアレイ品も開発中だという。
このほか同社は、このIR10100に出力信号の後処理を担う専用ASICを組み合わせて1パッケージに封止した複合品も参考出品した(図2)。温度補正など、従来はユーザーがマイコンを使って実装する必要があった複雑な処理をこのASICが実行し、測定対象物の温度に対して線形的な信号に自動的に調整してから出力する。
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