液晶ディスプレイを高機能化に導く新技術:液晶材料で円偏光を発生
近畿大学と立命館大学の研究グループは、液晶材料を用いて円偏光を発生させたり、回転方向を高速かつ連続的に切り替えたりすることに成功した。この技術を液晶ディスプレイに応用すれば、デバイスの高機能化が可能になるという。
近畿大学理工学部応用化学科の今井喜胤教授と立命館大学生命科学部応用化学科の花崎知則教授、金子光佑講師(当時)らによる研究グループは2025年7月、液晶材料を用いて円偏光を発生させたり、回転方向を高速かつ連続的に切り替えたりすることに成功したと発表した。この技術を液晶ディスプレイに応用すれば、デバイスの高機能化が可能になるという。
円偏光を発生する発光デバイスは、3D表示用有機ELディスプレイなどに用いられる。ただ、十分な性能を得るためには、円偏光の右回転か左回転のいずれか一方を取り出す必要がある。このためには、鏡面対称の構造を持つキラル(光学活性)な発光体が必要で、溶媒の種類や温度を適切に制御しなければならない。ところが従来方法では、高速に連続かつ可逆的に円偏光の回転方向を制御することはできなかったという。
近畿大学はこれまで、単一の液晶材料にキラルな有機発光材料を添加することで、円偏光を発生させることに成功している。今回はアキラル(光学不活性)な拡張π電子系有機発光材料である「ピレン」と「ペリレン」を、アキラル液晶とキラル液晶からなるハイブリッド液晶に添加した。
この結果、アキラルな発光体を添加したにもかかわらず、380〜530nmの範囲で円偏光の発生を確認することができた。また、この系に直流電場を加えたところ、電場のオン/オフに応じて、高速で連続かつ可逆的に円偏光の回転方向が切り替えられることを確認した。
ITOデバイスのイメージおよび、右円偏光と左円偏光のスイッチング[クリックで拡大] 出所:近畿大学、立命館大学
研究グループによれば、拡張π電子有機発光材料を変えることで、異なる色の円偏光を発生させることができ、高速切り替えも可能になるという。
ペロブスカイト発光ダイオードで近赤外円偏光を発生
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ペロブスカイト量子ドットからマルチカラー発光
近畿大学は、半導体材料の「ペロブスカイト量子ドット」に対し、外部から磁力を加えることで「円偏光」を発生させ、その組成を変えるだけで「マルチカラー円偏光」を発生させることに成功した。加える磁力の方向を変えれば、全ての色について円偏光の回転方向を制御できることも明らかにした。
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