富士フイルムは、2030年度における半導体材料事業の売上高を、2024年度の倍となる5000億円に引き上げる。CMPスラリーなど強みを持つ半導体製造前工程の材料に加え、後工程の新規材料開発を加速する。
富士フイルムが、半導体材料事業の強化を本格化させる。同社は2025年7月15日に都内で記者説明会を開催し、2030年度における半導体材料事業の売上高を、2024年度の倍となる5000億円まで引き上げると語った。
富士フイルム 取締役・常務執行役員でエレクトロニクスマテリアル事業部長を務める岩崎哲也氏は「決して不可能な計画ではない」と強調。2025〜2026年度の2年間で1000億円以上を設備投資と研究開発に投入し、半導体製造前工程用の材料で強みを持つフォトレジスト、CMPスラリー、プロセルケミカルに加え、後工程向け次世代材料への投資を加速することで、5000億円を目指す。
注力するのが、先端フォトレジストのシェア拡大と、後工程向けの新規材料開発だ。先端フォトレジストでは、シェアを2024年度の8%から2030年度は20%に引き上げることを目指す。
特に期待するのが、2025年7月15日に発表した、ネガ型ArF液浸露光向けのPFASフリーレジストだ。従来のArF液浸露光向けフォトレジストには、反応効率やレジスト表面の撥水性を高めるためにPFASが用いられている。だが、環境や生態系への影響に対する懸念から、PFASの使用を規制する動きが進む。そのため、PFASを使わない材料の開発が求められている。
富士フイルムは今回、有機合成技術、素材の配合技術(処方技術)、解析技術を用いて、ネガ型ArF液浸露光向けPFASフリーレジストを開発。ロジック半導体において、28nmプロセスノードの金属配線を高い歩留まりで形成できることを実証した。さらに、さまざまなテスト配線パターンにおいて、PFASが含まれている従来品と同等以上の電気特性を示したという。
富士フイルム シニアフェローの野口仁氏は、PFASフリーレジストについて、半導体デバイスメーカーからの関心は高いと語った。「どこまでできるのか、いつごろ実用化されるのかといった声が多く、関心の高さがうかがえる」(同氏)。PFASフリーレジストの導入について「コストの大幅な増加はない。従来と同等のコストで導入できることを前提として開発している。ただ、新しい材料になるので、半導体メーカーは、プロセスインテグレーションや(製造したデバイスの)評価が必要になる」と説明した。なお、今回開発したPFASフリーレジストは極端紫外線(EUV)露光技術にも展開できる可能性があるとしている。
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