自動車メーカーは10年以上にわたって、レーダー技術の採用を視野に入れてきた。ただし実際の搭載には、車の安全性に関わるとはいえコストがかかる技術だけに、自動車業界の典型的な特性通りに慎重な姿勢を示してきた。この状況が変わりつつある。シリコン技術を用いたセンサーの製造コストが低下傾向にあるほか、高級車でレーダー技術が訴求ポイントになるという実績ができたからだ。今後数年の間に、中価格帯の自動車にもレーダーシステムが搭載されるケースが徐々に増えていくとみられる。また、シリコンチップやレーダーシステムの低価格化が進めば、車載レーダーの搭載を義務付ける国が増える可能性もある。
車載レーダーの応用自体も進化する。すでに正面方向の衝突を防止・緩和する機能は実現されているが、2011年には、車両の後方に向けて取り付けたレーダーを利用して、死角をモニタリングしたり駐車時に運転者を支援したりする機能も登場する(図1)。さらに2012年以降は、ドライブバイワイヤー(drive by wire)によるハンドルやアクセル、ブレーキの制御に向けて、前方/後方のレーダーを用いた高度なアルゴリズムや車線検出システムが実用化され、将来的には自動運転が実現できるようになるかもしれない。
「すべての世帯と事業者が、自らのエネルギー消費についてタイムリーかつ実用的で、行動につながるような情報にアクセスできるようにする」 ―― これはGeneral Electric(GE)やグーグル、インテル、Honeywell International(ハネウェル)、Whirlpoolなど47社が連名で米国のオバマ大統領に送った公開質問状の中で、目標として掲げられた焦点である。この公開質問状では、次のような趣旨の提言もあった。「消費者に、パソコンや電話などの端末を用いて電力消費を自ら監視・管理できるような手段を提供すれば、何百万もの人が生み出す電力消費の低減効果によって、温室効果ガス排出量を削減できる。さらに、数十億ドル規模の電気料金の節約にもつながる」。
グーグルはすでに、「PowerMeter」と呼ぶアプリケーションソフトウエアを無償でダウンロード提供している(図2)。ブレーカーボックスに取り付けたアドオンモジュールと連携して機能し、家庭全体のエネルギー消費を監視できるアプリケーションだ。アドオンモジュールとしては、再生可能エネルギー事業者である米国のEnergyが供給する電力モニター「TED」(The Energy Detective)などが使える。一方でインテルは、さらに一歩進んだアプローチを進めている。同社はかつてコンピュータの「パーソナライズ(個人化)」で一役買ったように、今、電力管理のパーソナライズに取り組んでいるのだ。具体的には、個人向けのエネルギー監視装置のプロトタイプを開発した。ブレーカーボックスではなく、壁のコンセントにつないで使う。人工知能を用いて、家庭内で稼働中の機器を検知したり、リアルタイムの電力消費量を推計したりする機能を備える。
2011年には、インテルとそのパートナー企業のほか、競合各社も、個人向け電力管理デバイスの包括的なエコシステムを発表するとみられる。
長期的な視点で見ると現在は、高効率のエネルギー貯蔵デバイスの実現に向けて、数多くの新奇な技術が姿を現している段階だ。しかし、リチウムイオン2次電池に代わる技術として実用化が期待できるものは、これまでのところ現れていない。このためリチウムイオン技術は、近年改良が進んでいることもあり、短期的には従来通り主導的な位置付けを維持するだろう。
米国の新興企業であるA123 Systemsは、Massachusetts Institute of Technology(MIT)が開発したナノスケール材料を利用する最先端のリチウムイオン電池の開発・製造を手掛けているメーカーだ(図3)。最近では、中国最大手の自動車メーカーであるShanghai Automotive Industryの2012年モデルの電気自動車(EV)向けに電池パックを開発する企業として選定された。さらにA123 Systemsは、44MW(メガワット)相当の電池を、熱エネルギーや再生可能エネルギーの事業を手掛けるAESの子会社であるAES Energy Storageに提供する契約を締結したと発表した。これは、太陽光発電所や風力発電所をスマートグリッドに統合する取り組みの1つのステップに位置付けられている。
リチウムイオン2次電池は現在、エネルギー貯蔵技術のシンボル的な存在だ。しかし、エネルギー密度に限界がある上、原材料の調達が容易でないといった特有の問題を抱える。このため、リチウムイオン2次電池に代わる技術が近い将来に実用化されなければ、電気自動車の製造に支障が出る可能性もある。
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