電気自動車の普及には、充電器インフラが欠かせない。各種の充電器が開発された他、どのように充電器を設置すればよいのか、さまざまなアイディアが生まれてきた。
電気自動車がどれほど早く普及するかは、充電インフラの整備にかかっているというのが、「第2回 EV・HEV 駆動システム技術展(EV JAPAN)」(2011年1月19日〜21日に東京ビッグサイトで開催)での出展各社の共通認識である。
充電器の電気的な定義や、電気自動車と充電器が交換するプロトコル情報は、CHAdeMO協議会の仕様(関連記事「自動車4社と東京電力が電気自動車向け充電設備の標準化団体を設立」)で定まっている。JFEエンジニアリングやアルバック、菊水電子工業、高岳製作所(図1)、富士電機などは、この仕様に準拠しながら小型化や形状、ユーザーインタフェースなどに独自の工夫を凝らした充電器を展示した。
会場では、日本国外にもCHAdeMO仕様が広がっているため、充電器市場の成長が見込めるものの、中国市場の先行きが不透明なことを挙げる声が強かった。
専用充電器を改良するという道以外を進む企業もある。
九州電力は、充電インフラへの幅広い取り組みを見せた。中でも「EVコンセント」を利用した取り組みが注目を集めていた(図2)。EVコンセントは、家庭で電気自動車に充電する際に利用するコンセントであり、数千円程度で市販されている。「EV向けの専用充電器は機器の価格だけでも数十万円が必要になる。投資に対する見返りがはっきりしない限り、大型店舗などに大量に広く普及するのは難しい。そこで、当社ではEVコンセントを専用充電器の代わりに大型店舗などに普及させる手法を提案している」(九州電力技術本部総合研究所事業推進グループで副長を務める村上慎治氏)。
EVコンセントは家庭用電源から電気自動車に電力を供給する部分だけからなる。これにインターネットへ接続する制御部を追加する。「EVコンセントは各社が製品化しており、制御部と組み合わせても専用充電器より1桁は低価格である」(村上氏)。
制御部は携帯電話機やIDカード、RFIDタグによる認証機能とインターネット接続機能を備えている。制御部の機能を使えば、大型店舗で買い物をすると充電ポイントを獲得できるといったサービスを展開しやすくなる。専用充電器を無償で利用可能にしたり、来店した客からわずかな電気料金を課金する取り組みと比べて、店舗の投資に対する見返りが予測しやすくなっており、投資額自体も小さくなることが普及につながるとした。
福西電機とホーキングが協力して進めるサービスも、電気自動車用充電器の普及を大きく広げる可能性がある。
福西電機はパナソニック電工の「ELSEEV」など複数の充電スタンドに向けて、計測・制御ユニット「EV-DT03-S」や認証コントローラ「EV-NA-FE」、認証サーバアプリケーションソフトウエア「EV-AP-FE」などを製品化した(図3)。
他社製の充電器にボックス型の計測・制御コントローラを接続して使う。テンキーやFeliCaインタフェースなどを備えた認証コントローラを外部に用意し、32台までの充電器を制御する。
この仕組みを飲料自動販売機の設置、管理と組み合わせたのがホーキングである。同社は飲料自動販売機の大手オペーレータなど20社が出資する企業であり、全国の飲料自動販売機の約45%をカバーする。
「飲料の自動販売機の設置に向くスペースと充電器の設置に適した立地は互いに重なる。充電器の状態確認などに専用の人員を割り当てるのは、人件費から見て困難だ。だが、飲料オペレータは定期的に自動販売機をメンテナンスするため、すぐそばにある充電器の状態をさほど手間をかけることなく確認できる」(新規事業の立ち上げを専門とする事業マーケティング企業、インキュベータ代表取締役の小泉俊明氏)。
そこで、飲料の自動販売機を3台新規に設置すれば、EV専用充電器の工事費用、充電器本体の1台の費用、充電器のメンテナンス費用を全て無料にするという「EV VENDER」事業を2011年から開始した(図4)。「全国各地への展開を考えており、まず神奈川県横須賀市、次に大阪府でのサービスを開始する予定である」(小泉氏)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.