ドイツの研究チームが、「インテリジェント」な歯列矯正器を開発している。歯列矯正器に圧力センサーを内蔵することで、1本1本の歯にかかる力を矯正歯科医が把握できるようにしたものだ。
ドイツの研究チームが、「インテリジェント」な歯列矯正器を開発している。歯列矯正器に圧力センサーを内蔵することで、1本1本の歯にかかる力を矯正歯科医が把握できるようにしたものだ。
米国のサンフランシスコで開催されている半導体集積回路技術の国際学会「ISSCC(International Solid-State Circuits Conference) 2011」(2011年2月20日〜24日)において、ドイツのフライブルグ大学IMTEK(Institute for Microsystem Technology, University of Freiburg)に所属する博士課程の学生であるMatthias Kuhl氏が、このシステムについて発表した。半導体チップに24個の圧力センサーを集積することで、チップ表面で面内応力成分の分布図を2枚作り出す仕組みだ。
Kuhl氏によれば、歯並びの悪さを整える歯列矯正器は、1900年ころに実用化されて以来、基本的には同じ原理に基づいて機能しているという。歯列矯正器の成果が期待通りに得られるかどうかは、矯正歯科医の経験に強く依存していると同氏は指摘する。今のところ、矯正器が歯にかけている圧力を測定する唯一の方法は、ばねばかりによる一次元測定しかないからだ。
Kuhl氏らの研究チームが開発した圧力分布図作成システムによって、矯正歯科医は圧力の度合いについて精密で正確な情報を入手できるようになるので、より効果的な治療を施せるようになるかもしれないと同氏は述べている。発表論文によれば、このシステムは圧力を25kPa(キロパスカル)以上の分解能で検出する。
Kuhl氏によれば、米国内でおよそ450万人が歯列矯正器を装着しているという。
同論文によると、この圧力分布図作成システムは、センサーを集積したチップの他、13.56MHzを利用する通信用の微小コイルで構成されている。
システムの中核を担うチップは、0.35μmのCMOS技術で製造した。テレメトリ(遠隔計測)用のインタフェース回路を集積しており、13.56MHzのASK(振幅偏移変調)波を使ってデータと電力を外部とやりとりできる。
今回の論文によれば、このシステムのサイズは2mm×2.5mmであり、歯列矯正治療での使用に十分な小ささだ。チップと微小コイルは、フリップチップ技術で接続しているという。
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