University of Michigan(ミシガン大学)の研究チームは、ミリメートル大サイズと極めて小さい「オールインワン・コンピュータ」を発表した。
University of Michigan(ミシガン大学)の研究チームは、ミリメートル大サイズと極めて小さい「オールインワン・コンピュータ」を開発し、米国のサンフランシスコで開催されている半導体回路技術の国際学会「ISSCC(IEEE International Solid-State Circuits Conference) 2011」(2011年2月20日〜24日)で発表した(図1)。1mm3に満たない容積に、マイクロプロセッサの他、電源用の太陽電池から通信用の無線回路に至るまで、単独で動作するコンピュータシステムとして必要なすべての要素を統合したという。こうしたコンピュータの開発は世界初だと同大学は主張する。
同大学は今回、緑内障患者の眼球に埋め込む用途を想定し、ミリメートル大のオールインワン・コンピュータを設計した。同大学の研究チームによると、このコンピュータは他にも、無線センサーネットワークやリモート監視などに使えるという。
同大学で教授を務めるDennis Sylvester氏は、「われわれは世界で初めて、完全なコンピューティング・システムをミリメートル大のサイズで実現した」と述べた。同じく同大学の教授であるDavid Blaauw氏および助授のDavid Wentzloff氏との共同開発である。
Blaauw教授は、「ミリメートル大のシステムは、人体監視や環境監視、そして建物監視など数多くの応用が考えられる。携帯型デバイスよりも小さくなれば、人々はこうした監視デバイスに頼るようになるだろう。そうした監視デバイスを1人当たり10個から100個も利用するようになる可能性がある。1人当たりの消費量がそのように増加することで、今後の半導体業界の成長を促進するようになるだろう」と述べた。
同研究チームがこのミリメートル大コンピュータの最初の用途として想定したのは、緑内障患者の眼圧を測定し、病症の進行状況を測定するシステムだった。今回発表したシステムでは、1mm3よりも小さい容量の中に、マイクロプロセッサと眼圧センサー、メモリの他、電源を確保するための薄膜2次電池とその充電用の太陽電池、そして記録した測定結果を外部に送信する無線通信回路とアンテナまでも内蔵した。
研究チームは、この極小サイズのコンピュータシステムを「Phoenix」と名付けている。今回発表したのはその第3世代の試作品であり、同チームによると消費電力は旧来のプロセッサに比べて動作時に10分の1、待機時に3万分の1と極めて小さいという。具体的には、15分ごとに起動して眼圧を測定し、その結果を無線送信するという動作を繰り返す場合、平均消費電力はわずか5.3nWである。内蔵する2次電池の充電には、太陽光なら1.5時間、室内照明なら10時間ほど照射すればよいという。
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