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慣性センサー市場が20.3%の成長率で急拡大、2015年には25億6千万米ドル規模にセンシング技術

» 2011年03月02日 13時59分 公開
[Julien Happich,EE Times Europe]

 民生機器向け慣性センサー市場が急激な成長を遂げている。その要因は、加速度センサーやジャイロスコープ(角速度センサー)、磁力センサーなどを、携帯電話機やタブレット型PC、ゲーム機、ノートPCに内蔵する動きが急速に進んだことにある。市場調査会社であるフランスのYole DevelopmentでMEMS&センサー市場担当アナリストを務めるLaurent Robin氏によると、慣性センサー市場は年平均成長率20.3%で伸びており、2009年には8億4700万米ドルだったが、2015年には25億6千万米ドルに達する見込みだという(図1)。

 今後は、MEMS加速度センサーの市場が戦略的に重要な意味を持つようになると見られる。単一のパッケージに3軸の加速度センサーと3軸のジャイロセンサーをまとめた製品を2015年までに供給することが、さまざまなアプリケーション分野で期待されているからだ。このため、加速度センサーおよびジャイロスコープは、それぞれの技術間でも、それらを手掛ける企業間でも、大きな相乗効果が期待できる。

図1 図1 動き検出用センサーの2010年〜2015年の市場動向予測
出典:Yole Development

 ジャイロスコープ市場は現在、STマイクロエレクトロニクスやInvenSenseが3軸ジャイロセンサーを投入したことを受け、極めて好調だ。携帯電話機への3軸ジャイロセンサーの搭載が急増し始めたのはごく最近だが(アップルの「iPhone」への搭載は2010年6月に始まり、現在はAndroidスマートフォンへの搭載が進行中である)、ゲーム機市場が急速に拡大している上、タブレット型PCやリモートコントローラなどの新しい市場も立ち上がっている。

 また、電子コンパス市場も勢いに弾みをつけている。携帯電話機向けデジタルコンパス市場は、2010年に飛躍的な成長を遂げた。さらに今後は、ゲーム機や高度なジオタギング(位置情報取得)機能を備えたデジタルカメラなど、携帯電話機以外にも市場の広がりが期待できる。Yole DevelopmentのRobin氏は、「特に、新規参入メーカーが、電子コンパス市場ではるか先を行く旭化成エレクトロニクスに対して、今後どのように挑戦を挑んでいくのかが興味深い」と述べている。

 動き検出用センサー市場の魅力が増すにつれ、競争も激化している。現在は、50社を超える大小さまざまなメーカーが、同市場に狙いを定めている。しかし、民生機器市場のこの分野で大きな利益を上げている企業は、わずか数社のみだ。このほかのメーカーの多くは、なんとか利益を得ようと悪戦苦闘している状態にある。

 センサー市場には、以下のようにさまざまなレベルの競争が存在する。

 ●メーカー間の競争:完全な製品ラインアップ(加速度センサーやジャイロスコープ、磁力センサー)の提供に取り組む企業間の競争である。なお、こうした製品ラインアップをとりそろえる際には、1社のみで手掛ける場合と、パートナー企業と協業する場合とがある。例えばSTマイクロエレクトロニクスは、ハネウェルと協業して電子コンパスを手掛けている。

 ●デバイス間の競争:加速度センサーやジャイロスコープ、電子コンパスは、それぞれ単体で機能する他、複数を組み合わせて複合的な機能を実現することも可能だ。このためメーカー各社は、特定の機能に最適なソリューションとして、単体センサーや複合センサーモジュールを提案していく必要がある。

 ●ビジネスモデル間の競争:ファブレス企業と垂直統合型デバイスメーカー(IDM)という競合の図式もある。ファブレスとしてはInvenSenseなど、IDMとしてはSTマイクロエレクトロニクスやKionix、パナソニック、エプソントヨコム、フリースケール・セミコンダクタなどが挙げられる。市場で成功する上で重要な鍵の1つになるのが、製造コストの最適化である。すべてのメーカーは、コストを低減しながら、8インチサイズのウエハー処理ラインで適切な製造歩留まり率を確保できるように、かなりの取り組みを進める必要がある。

 ●ハードウエアとソフトウエアの競争:Moveaなどの企業は、ソフトウエアとセンサーフュージョン(複数のセンサーから得たデータを処理して高度な認識機能を実現する技術)の領域における新しい知見を活用することで、旧来のサプライチェーンに影響を与え始めている。

 ●技術の競争:デバイスメーカーは、3軸加速度センサーや3軸ジャイロスコープのような単体デバイスの他、加速度センサーとジャイロスコープを組み合わせたり、ジャイロスコープと電子コンパスをまとめたりした複合型のセンサーも提供している。複合型の実現形態としては、SiP(System in Package)技術を使う場合もあれば、1枚の半導体チップに集積する場合もある。こうした複合型に向かう動きは、デバイスメーカーが単体センサーからセンサーフュージョンを適用した「ソリューション」への転換を図っていることが背景にある。

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