アバゴ・テクノロジーが発売した反射型エンコーダ「AEDR-8500」は、小型であることに加え、3チャネルのデジタル出力に対応したことと、逓倍(ていばい)回路を搭載したことが特徴だ。
アバゴ・テクノロジーは、外形寸法が3.95mm×3.4mm×0.95mmと小さい反射型エンコーダ「AEDR-8500」を発売した(図1)。
一般に、反射型エンコーダは、LED素子や受光ICなどで構成しており、モーターの回転方向や回転速度の検出に使われている(図2)。新たに発売したAEDR-8500は、小型であることに加え、3チャネルのデジタル出力に対応したことと、逓倍(ていばい)回路を搭載したことが特徴である。外付け部品は、LED素子の電流制御用抵抗が、1つだけでよい。「3チャネルのデジタル出力に対応し、逓倍回路を搭載した反射型エンコーダは、業界初」(同社)という。
従来は、モーターの回転方向や回転速度を、2チャネルのデジタル信号によって検出するのが一般的だった。これに対してAEDR-8500では、インデックス信号(原点信号)を加えた、合計3チャネルのデジタル信号を出力する(図3)。これによって、モーターの回転する方向や回転の速度の検出だけではなく、回転位置の情報を得られることになる。「相対位置ではなく、原点を基準にした絶対位置を使った高精度のモーター制御が可能になる」(同社)という。インデックス信号のパルス幅は、一周期を360度としたとき、90度または、180度、360度のうち、いずれかを選べる。
また、逓倍回路を内蔵したことで、検出位置の分解能を容易に高められる(図4、図5)。基本の位置分解能は、304LPI(Line Per Inch)。2逓倍時の位置分解能は608LPI、4逓倍時は1216LPIに高まる。位置分解能を変えるとき、ハードウエアの変更は不要で、専用端子のロジックの高低を設定するだけでよい。
AEDR-8500を使えば、従来の2チャネル出力のエンコーダに必要だったのと同じ実装スペースに、3チャネル出力のAEDR-8500を実装できる。アバゴ・テクノロジーでは、設置時の取り付け自由度が高いことも訴求する。エンコーダのLED素子からの光を反射させる「コードホイール」とエンコーダの間のスペース(動作位置範囲)は、0.5mm〜1.0mmと広い。「実力値としては、1.0mm以上のスペースでも使える」(同社)という。
主な用途は、デジタルカメラや携帯電話機のカメラ、プリンタ、複写機、CD/DVDドライブ、監視カメラ、車いす、医療機器など。電源は、5V単一。動作温度範囲は、−20℃〜85℃。すでにサンプル出荷を始めており、サンプル価格は1070円。2011年4月に量産出荷を始める予定である。
「5年以上もの開発期間を掛け、AEDR-8500の製品化に取り組んできた。これまで、小型の反射型エンコーダ単体で、インデックス信号を生成するのは難しいとされてきた。これを実現したAEDR-8500は、画期的なエンコーダ製品だと考えている」(同社)という。エンコーダの方式には、反射型以外にも、「光学透過型」と呼ぶ方式もある。小型/薄型化という観点で、反射型エンコーダが有利である。
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