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全ての携帯へNFC、ネットと日常生活を「タッチ」が結ぶ無線通信技術 NFC(1/3 ページ)

さまざまなものに触れることで情報を伝える近距離の無線通信技術「NFC(Near Field Communication)」。2011年以降、NFC とスマートフォンが組み合わさることで、新しい用途が広がっていく。

» 2011年04月11日 11時53分 公開
[前川慎光,EE Times Japan]

 NFC(Near Field Communication)は、非接触カード技術と相互接続技術を組み合わせた近距離の通信技術である。このNFCを採用したスマートフォン(NFCスマートフォン)が普及したときのインパクトは何か―。

 日本では既に、「PASMO」、「Suica」といった交通乗車券カードや、「Edy」などのマネーカード、これらの非接触カード技術を搭載した携帯電話機が広く普及している。NFCの1つの要素である非接触カード技術は、1970年ころに登場しており、今さら何が新しいのだと思う読者も多いかもしれない。

 しかし、スマートフォンにNFCが標準搭載されると、状況は大きく変わる。スマートフォンは、情報入力や情報表示、インターネットへの接続機能が搭載されていることに加え、個人のさまざまな情報を格納可能だからだ。将来を見渡したとき、NFCスマートフォンには、主に2つのインパクトがある(図1図2)。

図1 図1 インターネットのさまざまなサービスと日々の行動を連携させる土台が整う 今回取りあげるNFCや、測位技術(GPS)といった要素技術をうまく使うことで、利用者の行動をスマートフォンを介してインターネットサービスにつなげられるようになる。
図2 図2 NFCスマートフォンが普及するインパクトは大きい 現在想定されているNFCスマートフォンの用途は主に、電子マネーや非接触クレジットカード、交通乗車券カードの機能である。ただ、将来を見渡すと、NFCスマートフォンを介して、身の回りの機器やモノ、インターネットサービスが利用者と強くつながる時代がやってくる。

SNSと日々の行動が連動

 まず1つは、インターネット上のさまざまなサービスがNFCスマートフォンを介して、日々の行動につながること。

 例えば、NFCスマートフォンをヘルスケア機器にタッチして利用者の体調データを移動させ、インターネット上の健康管理サービスと連携したり、物品のレシート情報とインターネット上の家計簿管理サービスを連携したりといったことが容易になる。

 2011年2月には、国内最大のSNS「mixi」を運営するミクシィが、NFCを活用したAndroidスマートフォン向け情報共有サービス「taglet」に自社サービスを対応させた。「SNSのサービスとNFCスマートフォンを連携させたのは世界初」(同社)という。「店舗に訪れた」、「書籍を購入した」といった行動と、SNSの機能を連動させることを想定している。使用例としては、例えば店舗に訪れたとき、店舗のNFCタグにタッチしてSNSに記録し、友人と情報共有したり、店舗のクーポンをインターネットからダウンロードしてタッチして使うといったことが想定されている。

 もう1つの意義は、身の回りのさまざまなデバイス(機器)やモノが、NFCによってスマートフォンとつながることだ(図3)。身の回りのさまざまな機器とは、モバイル機器や、デジタル家電や白物家電、自動車などだ。これらの機器とNFCスマートフォンをつなげることで、例えば、利用者固有の情報を機器に移動させ、その機器を「自分好み」にカスタマイズすることが可能になる。

図3 図3  NFCスマートフォンのアプリケーション例 (a)は、NFC内蔵コンセプトカー。(b)は、NFCタグを張り付けたポスター(スマートポスター)から、情報を携帯電話機で読み取っているイメージ。(c)は、利用者が独自のNFCタグを作成できるアプリケーションソフトウェア「NXP TagWriter」の利用イメージ。(a)の出典はNXPセミコンダクターズ。

 自分好みに機器をカスタマイズするという1つの例が、NXPセミコンダクターズが2011年2月に携帯電話関連の国際展示会「Mobile World Congress 2011(MWC 2011)」で披露した「NFC内蔵コンセプトカー」だ。ドイツに本社がある自動車部品メーカーContinentalと協力し、開発したもの。「NFCがもたらす、人と自動車の新しいコミュニケーション環境」をコンセプトにしており、NFCを活用したさまざまな機能を搭載した。

 例えば、こんな具合だ。ドライバーが外出時にNFCスマートフォンを自動車のドアにかさずと認証処理が実行され、自動的にロックが解除される。NFCスマートフォンをダッシュボードに置くとカーオーディオやカーナビと連携し、ドライバーの好みの音楽や、目的地を自動で設定してくれる。運転後、ドライバーが自動車から離れるときには、自動車の側からNFCスマートフォンに情報を送る。自動車を離れた後にも、NFCスマートフォンのディスプレーで、ガソリン残量、燃費といった情報や、自動車を停車した位置情報を確認できる。

 NXPセミコンダクターズは、発表資料の中で、「NFCは、広く認識されている支払いやチケット管理を超えた機能を提供し、消費者のライフスタイルに不可欠なツールになる」と説明する。「NFCによって、自動車の運転がパーソナライズされることを想像してほしい。NFCは、われわれを取り巻くさまざまな技術と、われわれのかかわり方を変える技術だ」(同社)。

 この他、NFCには前述の通り、身の回りのあらゆるモノに電子的な情報を付与し、スマートフォンと連携させるといった利用シーンもある。固有情報を格納するタグ(NFCタグ)は、アンテナも含めた寸法が数cmオーダーと小型で、安価であるため、さまざまなものに張り付けられる。メモリー容量も多様な品種が用意されている。

 例えば、NFCタグを張り付けたポスターにNFCスマートフォンをタッチすることで、スマートフォンのWebブラウザが起動してインターネット上のサービスと接続したり、ポスターに関連したコンテンツをスマートフォンにダウンロードするといったアプリケーションが想定されている。

 一般利用者がNFCスマートフォンを使って、NFCタグに自由にデータを書き込めるアプリケーションも登場した。NXPセミコンダクターズが2011年3月に発表した「NXP TagWriter」だ。現在想定している利用シーンは、NFCタグを名刺として使うことなどだが、一般利用者が独自のNFCタグを作れるこのアプリケーションには、さまざまな用途があるだろう。

 以下に、さまざまな無線通信技術のなかでのNFCの立ち位置や、標準規格の策定動向、製品化動向を紹介する。

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