小型の機器では、複数のコネクタを実装するだけのスペースを確保できないことが多い。AppleはUSB 3.0とDisplayPortを1つのコネクタにまとめ上げることでこの問題を解決しようとしている。Thunderboltへの対応も視野にある。
新しいインタフェースとコネクタに関する米国特許「7918689」をAppleの3人の技術者が取得した。1つの比較的小型のコネクタで、USB 3.0やDisplayPortをはじめ、さまざまな信号のやりとりを統合するコンボインタフェースとして使えるという。特許の成立を受けて、柔軟性に優れた高速ポートとして機能する今回のコンボインタフェースへの移行が今後、幅広い種類の携帯型PCやデスクトップPCなどで進むと予測される。転送速度が10Gビット/秒という新しい高速インタフェース「Thunderbolt」への対応も可能だ。
このようなコネクタは、Appleの「iPod」や「iPhone」、「MacBook Air」など、「小さく薄いこと」が高く評価される製品に最適だ(図1)。Appleが業界において、新型コンボインタフェースへの移行を促すことができれば、今回の特許は同社にとって極めて重要なものとなる。
今回の特許の目的は、携帯型メディアプレーヤーやノートPC、デスクトップPCなどの間で、各種の音声信号や映像信号、データ信号などを容易に高速伝送できる新しい種類のコネクタを定義することだ。特許によると、コネクタのオス型/メス型両方の端部には、接点が1列に配置され、接点の数を柔軟に変更できるという(図2)。
今回の特許は、特許請求の範囲(claims)が23に及び、実施例(embodiments)も複数ある。特許の申請が行われたのは、2009年9月29日で、Intelが実用レベルの試作段階にあったThunderbolt(当時は「Light Peak」と呼ばれていた)を初めて公表してからわずか数日後のことだった。Appleは2011年2月末に、業界で初めてThunderboltを採用した製品を発表している。
Intelは、開発者向け会議「Intel Developer Forum 2010」の基調講演において、Light Peakを、最大データ転送速度が5Gビット/秒のUSB 3.0の後継となる光インターコネクト技術として位置付けた。今回の特許は、Light Peakについて特に触れてはいないが、USB 3.0やUSB 2.0、DisplayPort、既に利用されている各種のオーディオ信号、映像信号の伝送など、さまざまな高速データ通信規格に対する対応については詳細を記している。
Appleは、Thunderboltの最大データ転送速度である10Gビット/秒を実現するというコンセプトに基づき試験を実施した。USB 3.0の最大転送速度は5Gビット/秒であるため、これをはるかに上回る。同社によると、「インピーダンスと遠端クロストーク(FEXT)について、最大10Gビット/秒でSパラメータモデルを評価した」という。
今回の特許は、レセプタクルコネクタとオス型プラグコネクタとの間のDisplayPortとUSB 3.0信号の伝送について、詳細を説明している。こうした設計により、さまざまな標準規格向けの信号ラインを1つのコネクタに統合した場合に生じるクロストークを軽減したり除去できるという。
特許ではUSB 2.0用の接点を2つとUSB 3.0用の接点を4つ、USBの電源用接点を1つ、接地用接点を1つ備えたコネクタの実施例を示している。
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