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IDTが無線ICに参入、第1弾の可変利得アンプは「業界最高のノイズ性能」をうたう無線通信技術

米国の半導体ベンダーであるIntegrated Device Technology(IDT)が、無線信号の処理経路に使う高周波ICに参入した。2009年4月にRF製品部門を社内に設置し、開発を続けてきたという。

» 2011年04月19日 17時38分 公開
[薩川格広,EE Times Japan]

 米国の半導体ベンダーであるIntegrated Device Technology(IDT)が、無線信号の処理経路に使う高周波ICに参入した。無線高周波IC製品の第1弾として、携帯電話の基地局などの無線受信回路に使える可変利得アンプ(VGA)IC「IDT F1200」を2011年3月25日に発表した(図1)。2009年4月にRF製品部門を社内に設置し、開発を続けてきたという。

図1 図1 IDTの可変利得アンプIC「IDT F1200」 5mm×5mmの28端子QFN封止である。出典:IDT

 同社は主にクロックICやシリアルスイッチIC、インタフェースICなどを手掛けており、それらの製品をこれまでも携帯電話の基地局をはじめとした無線通信のインフラ機器に向けて供給していたという。無線高周波ICを新たに手掛けることで、「無線インフラ機器メーカーは部品の調達先を一元化できるというメリットがある」(同社でRF製品部門のマーケティングディレクターを務めるChristopher Stephens氏)と説明する。さらに、「当社が供給する無線高周波ICは、性能についても業界最高レベルだ。新規参入に当たっては、当社で従来クロックICを設計していたエンジニアを異動させるのではなく、無線高周波ICの経験が豊富なエンジニアを新たに採用した。無線インフラ機器に当社の無線高周波ICを適用すれば、システム構成を簡略化したり、小型化したりできる」(同氏)と主張している。

 IDT F1200は、40MHz〜160MHzに対応するIF(中間周波数)用の可変利得アンプICである。利得は最大22dBで、調整範囲は23dBと広く、分解能は0.25dBと高い。利得調整用のデジタル入力端子を7本備えており、これらに印加する7ビットの論理値で任意の利得を設定できる。

 この製品で「業界最高の性能」(Stephens氏)とうたうのは、雑音指数(NF)で、3.0dB以下に抑えた。「最も近い競合製品でも6.0dBだ」(同氏)という(図2)。この他、歪みが小さいことも特長として挙げている。具体的には、第3次出力インターセプトポイント(IP3)が48dBmと高い。「スプリアスフリーダイナミックレンジ(SFDR)を確保しやすい」(同氏)。

 SiGeバイポーラCMOSプロセス技術で製造した。消費電流は110mA。パッケージは5mm×5mmの28端子QFN。すでに量産出荷中である。1万個購入時の単価は4.85米ドル。対応周波数が異なる派生品種も用意した。150MHz〜260MHzの「F1206」と230MHz〜300MHzの「F1207」である。いずれもサンプル出荷を始めている。

 今後IDTは、2011年の夏ごろに無線高周波IC製品の第2弾を投入する計画だ。その製品の種別については明らかにしていないが、「当社のRF製品部門はインフラ市場に特化しており、民生機器向けの無線高周波ICを手掛けるつもりはない。無線信号の処理経路に使う高周波ICを、受信回路向けと送信回路向けの両方について供給していく考えだ。ただし、送信用のパワーアンプについては、当社で製品化する計画はない」(Stephens氏)と説明している。

図2 図2 IDT F1200の主な特性 低ノイズ、低歪みを特長として訴求する。出典:IDT

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