ReRAMは書き込み時間が短く、書き込み時の消費電力が低く、大容量化にも適しているなど、NAND型フラッシュメモリの後継として期待されている。開発フェーズが初期段階にあるため、企業間提携が盛んである。
しばらくの間沈黙を守っていたように見えたReRAM(Resistive Random Access Memory:抵抗変化メモリ)の開発企業4DSに動きがあった。
4DSは、半導体製造業者の業界団体であるSEMATECHのフロントエンドプロセス(FEP)に参加し、不揮発メモリの技術開発についてSEMATECHと協業すると発表した。同社はSEMATECHのメモリプログラムの開発チームと協力して、キャパシタやフローティングゲートを使わないメモリの開発に取り組む。4DS独自の材料プロセスと素子構造に基づき、消費電力の低いReRAMのワーキングプロトタイプの作成を目指す。
4DSは2009年に設立された米国の新興企業で、ReRAM技術の開発で大きな成果をあげたと主張している。同社は米国の株式非公開会社で、オーストラリアの4D-S Ptyの子会社である。4DSのCEOであるクルト・プフリューガー(Kurt Pfluger)氏は、メールの中で「当社は現在、プロトタイプの開発中である」と述べている。
ReRAMは、FeRAMやMRAM(Magnetoresistive RAM)、PRAM(Phase change RAM)などの次世代メモリ技術の中でも特に有望であるとされ、NAND型フラッシュメモリを置き換えるメモリとして期待されている。書き込み時間の短さや低い消費電力、大容量化に必要なスケーリングのしやすさなどが魅力だ。ReRAMを製品化するにあたり、これまでの課題は、メモリ素子の動作安定化(信頼性)だった。次なる課題は、ReRAMを開発する際のある種のジレンマを解くことだ。信頼性の高い材料を開発しなければならないが、製造コストを低く抑えるために、蒸着技術も実現しなければならない。
ReRAMは、印加する電圧によって高抵抗状態と低抵抗状態を切り替えられる材料を素子に利用する。ReRAMは電荷の有無を利用するNAND型フラッシュメモリと比べても構造上、微細化しやすい。セルサイズも小さくなる。ReRAMの1セルは直交する上下の電極に挟まれた材料からなる(図1)。従来のNAND型フラッシュメモリを置き換えていき、22nm以下の製造技術を適用する次世代不揮発メモリとして期待されている。
SEMATECHで新興技術担当バイスプレジデントを務めるラージ・ジャミー(Raj Jammy)氏は、「ReRAM材料に関する4DSの独自技術は、SEMATECのメモリ素子やプロセス技術、特性などを補完するものだ。4DSとの協業が進むにつれ、SEMATECHの次世代不揮発メモリに最適な材料とプロセス技術の開発がさらに進展するだろう」と語っている。
4DSの不揮発メモリ向けプラットフォームは、CMOSの低温プロセスと互換性があり、配線工程(BEOL)が単純になるため、必要なマスクステップの数がNAND型フラッシュメモリに比べて少ない。さらに、消費電力が低く、従来のNAND型フラッシュメモリより書き込み時間が短い。この他の詳細については、明らかにされていない。
ReRAMに類似した不揮発メモリの開発も進んでいる。メモリ開発を手掛ける新興企業で、Applied Materialsからの出資を受ける米国のAdesto Technologiesなど、複数の企業がCBRAM(Conductive Bridging RAM)の開発に取り組んでいる*1)。
*1)訳注 抵抗変化を利用したメモリであること、メモリセルが2つの電極に挟まれた材料からなるという点で、CBRAMはReRAMと似ている。材料として固体電解質を使い、イオンの再配置によって抵抗が変化するという点でReRAMと異なる。
Hewlett-Packard(HP)はメモリスタ(memristor)技術の商用化を目指している。同社は2010年に、韓国のHynix Semiconductorとメモリスタ技術の共同開発契約を結んだ。HPは当初、ReRAMの商用化に向けてメモリスタ技術を研究開発していたが、現在はReRAMとは切り離した形で、Hynix Semiconductorと共同で新しい材料およびプロセスを統合した技術として開発に取り組んでいる*2)。
*2)訳注 パナソニックは2010年6月に強誘電体を利用したメモリスタを開発している。
ベルギーの研究機関であるIMECは、NAND型フラッシュメモリのスケーリング限界を調べるために、ReRAM研究の新プロジェクトを進めている。IMECのコアCMOS研究プログラムには、Samsung ElectronicsやHynix Semiconductor、エルピーダメモリ、Micron Technologyなどの大手メモリメーカー5社がコアメンバーとして参加している*3)。これら企業は研究開発費を負担する代わりに、研究成果を自社の製品に応用する権利を持つ。
*3)訳注 当初はドイツのDRAMメーカーであるQimonda(キマンダ)が参加していたが、2009年の破産申請後、脱落している。
このほか、ReRAMの研究開発を手掛けるUnity Semiconductorは、2010年8月にCEOであったDarrell Rinerson氏が退陣し、自社製造からIP企業への転換を図っている。Micron TechnologyはUnity Semiconductorに小額の投資を行っており、Unity Semiconductorは今後、Micron Technologyの300mm工場を使用してReRAMの研究開発を進める計画だという。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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