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大型ディスプレイの将来、省エネ対応が必須ディスプレイ技術(1/2 ページ)

 ディスプレイが進化する方向は何だろうか。1つは省エネだ。2011年9月には省エネ対応テレビの新基準「Energy Star 5.3」の運用が始まる。50インチ型を大きく超えるテレビは5.3規格をクリアしにくいことが分かった。将来の大型テレビはどのような技術を使うことになるのだろうか。

» 2011年06月15日 20時45分 公開
[Nicolas Mokhoff,EE Times]

 ディスプレイが進化する方向は何だろうか。1つは省エネだ。2011年9月には省エネ対応テレビの新基準「Energy Star 5.3」の運用が始まる。50インチ型を大きく超えるテレビは5.3規格をクリアしにくいことが分かった。将来の大型テレビはどのような技術を使うことになるのだろうか。

 そのヒントが、2011年5月に米カリフォルニア州ロサンゼルスで開催されたディスプレイ関連の国際学会開催されたSID(Society for Information Display Week)2011」にあった。

 LEDバックライトの性能や設計の進歩に伴い、フラットパネルディスプレイのエネルギー利用効率は向上し続けている。英国の市場調査会社であるIMS Researchでディスプレイ・LED・ライティング担当シニアバイスプレジデントを務めるロス・ヤング(Ross Young)氏によると、LEDのエネルギー利用効率は、内部量子効率(IQE)と光取り出し効率の向上によって、1年間に約10〜15%ずつ向上しているという。

 SID 2011と同時開催された「グリーンテクノロジ」の市場調査会議では、「低消費電力のディスプレイは、消費電力の高いディスプレイと比べて経済的利益が高い」という意見が多く聞かれた。

 米環境保護局(EPA)が推進する電気機器の省電力化プログラム「国際エネルギースタープログラム(Energy Star)」も、低消費電力ディスプレイの普及に一役買っている。2010年5月に運用が始まった「Energy Starテレビジョン受信機基準4.0」では、ディスプレイの消費電力を約40%低減することが求めれている。また、テレビの待機電力を1W以下に抑えることも規定されている。

2011年9月以降、大型テレビがぶつかる壁

 2011年9月に運用開始を予定する「同5.3」では、大型ディスプレイに対して消費電力をさらに30%低減するよう求めている。さらに、50インチ型より大型のディスプレイの場合、画面サイズに比例して消費電力が増えてはいけないとされており、IMS Researchのヤング氏によれば、55インチ型ディスプレイでは40%の削減が求められるという。

 ヤング氏は、「50インチ型より大型のPDPテレビをEnergy Star 5.3に準拠させるには大きな課題が残る。CCFL(冷陰極蛍光管)バックライトを使った液晶テレビも、同規格への準拠は難しい」と語る。

 Samsung ElectronicsのLCD部門でシニアアドバイザを務めるJun Souk氏によれば、大型テレビが広く普及したことで、平均画面サイズが大きくなり、テレビの平均消費電力は急増しているという。

 米国世帯の全てのフラットテレビをEnergy Star 4.1に準拠したグリーンディスプレイテレビに置き換えた場合、1年間に50億米ドル相当のエネルギーコストを削減できるという。さらに、Energy Star 5.1に準拠するグリーンディスプレイに置き換えた場合の経済効果は、70億米ドルに上ると、Souk氏は試算した。

LEDの次はMEMSシャターか

 従来技術がLED技術に置き換わった後、将来有望となる技術としてSouk氏はMEMS技術を適用した光学シャッター方式に注目している。さらにその後は、エレクトロウェッティング方式があるという。

 MEMSシャッター方式を採用すれば、すぐにでもLEDバックライト方式よりも高効率なテレビを開発できる。MEMSシャッター方式の効率をさらに上回るのが、エレクトロウェッティング方式だ。エレクトロウェッティング方式は、2011年1月にSamsung Electronicsが買収したディスプレイ関連企業であるLiquavistaが開発した技術である。

 Souk氏は、「エレクトロウェッティング方式のディスプレイは透過、反射、半透過モードで動作し、従来のディスプレイ技術の2〜4倍の光学性能を有する。同方式は消費電力を劇的に削減できる可能性を持った技術だ」と説明する。

 「エレクトロウェッティング方式を使ったディスプレイは、光利用効率が他の技術の2倍以上と高く、視野角が広く、駆動周波数が低いため、消費電力を大きく削減できる。さらに、どんな照明の下でも見やすいといった特長を備える」(同氏)という。

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