中国国内で既に300社ものファブレスメーカーが台頭している。しかし、信用のおける上位メーカー間にも技術にばらつきがあり、今後、約半数の企業が脱落していくと、IHS iSuppliは予測する。
米国の半導体業界では、カリフォルニア州パロアルト市のSand Hill Roadに拠点を置くベンチャーキャピタルからの半導体チップメーカーに対する投資が枯渇してきた。そのため、優秀な中国人エンジニアを伴って中国拠点への移転を進めてきた。これらの中国人エンジニアたちは、米国内で博士号を取得しているだけでなく、シリコンバレーの業界各社で実践的なビジネス経験も積んでいる。
中国では現在、国内各地でファブレス企業が続々と誕生している。業界の推測によると、その数は約300社に上るという。中国政府はこのような新興企業に対して、欧米のメーカー各社から勧められるがままに、これまでにない多彩な競争上の優位性を提供してきた。資金調達やIPコア、ツール、エンジニアなどの優れた人材、ファウンドリ契約などのあらゆる面でだ。
ここわずか2年の間にも、ARMやCEVA、MIPS Technologies、TensilicaなどIPコアを手掛ける企業は、IPコアのライセンス供与に対して中国のファブレス企業の興味が高まる一方だと実感している。またIPコア企業の側も、成熟した中国の半導体業界に対して関心を高めていることから、業界は将来、大きく変わっていくだろう。
中国の半導体業界は、かつて不祥事を起こした中国人エンジニアであるチェン・ジン(Chen Jin)氏の時代から、大きな変化を遂げた。上海交通大学の教授でもあった同氏は、中国政府から資金提供を受け、2003年に国内初となるDSP「Hanxin 1」を開発したと発表したが、その後2006年に、それが詐欺だったことが明らかになり、中国内の業界をひどく驚かせた人物だ。同氏の開発チームは、Motorolaの試作チップの商標を剥がしてHanxinのラベルにすり替えただけだったのだ。
中国では、信頼性の高いファブレス企業の間でも、技術能力の格差はいまだに大きい。IHS iSuppliでシニアアナリストを務めるビンセント・グー(Vincent Gu)氏は、中国の半導体チップメーカーの能力がますます両極化していくことを指摘した上で、中国のファブレス半導体メーカーは今後3〜5年の間に、約150社程度までふるい落とされていくと予測する。
こうした予測から、中国市場で唯一、不変だといえるのは、「長い間、変化しないものは1つもない」ということだ。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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