SPARCプロセッサを採用したことだけが勝因ではない。インターコネクト性能とプロセッサ性能のバランスが良いことが理由だ。TOP500で最も消費電力が大きなスーパーコンピュータでもあるが、エネルギー効率は4位と優れている。
日本のスーパーコンピュータ「京(けい)」が、Linpackベンチマークで8.16PFLOPS(ペタフロップス)という世界最高性能を達成し、第37回(2011年6月版)のTOP500リストで第1位を獲得した。京は、富士通の「SPARC」プロセッサを6万8544個搭載し、巨大規模のクラスタ構成が必要な用途に向けて開発された。
最高性能を実現した京は、理化学研究所(理研)と、SPARCアーキテクチャをOracleとともに保有する富士通が共同で開発した(図1)。日本のスーパーコンピュータがTOP500リストのランキングで第1位を獲得するのは、2004年11月の地球シミュレータ(NEC)以来のことになる*1)。また、富士通のプロセッサとSPARCアーキテクチャが世界最速とされるコンピュータに搭載されたのも今回が初めてだ。
*1)今回の5位は東京工業大学の「TSUBAME2.0」(1.19PFLOPS)。100位以内には国内の8システムが選ばれた。
前回(2010年11月版)のTOP500リストで第1位の座を獲得したのは、2.6PFLOPSの性能を達成した中国のスーパーコンピュータ「天河一号A(Tianhe-1A)」だった。京は今回、この天河一号Aを3倍も上回る性能を実現した。今回のTOP500リストで2〜6位にランクインした5種類のコンピュータを合計した性能よりも、京の方が強力だ。
また京は、825MFLOPS/W(メガフロップス/ワット)という高いエネルギー効率を実現し、TOP500リストの中でも第4位にランクインしている。消費電力は9.89MWと大きく、リスト中第1位だ。TOP500リストの中で、消費電力量が1MW以上のスーパーコンピュータは29台ある。IBMの「BlueGene/Q Prototype」は、TOP500リストでは110位だったが、エネルギー効率の面では最も高い2097MFLOPS/Wを実現し、第1位を獲得している。
TOP500リストに登場するスーパーコンピュータは年々、消費電力量が増大する一方、エネルギー効率も高くなる傾向にある。消費電力量の平均値は、2010年6月には397KW、2010年11月は447KW、そして今回は543KWだった。エネルギー効率の平均値は、2010年6月が195MFLOPS/W、2010年11月は219MFLOPS/W、そして今回は248MFLOPS/Wに改善している。
コンピュータの電力効率を高める方法の1つとして、グラフィックス・コプロセッサを採用する傾向があるようだ。TOP500リストのうち、アクセラレータとしてGPUを搭載しているスーパーコンピュータの数は、2010年11月には17台だったが、2011年6月には19台に増えている。
GPUを搭載しているスーパーコンピュータのうち、NVIDIAのチップを採用しているものが12台、IBMのCellプロセッサが5台、AMDのRadeonが2台だった。米University of Tennesseeの教授であるジャック・ドンガラ(Jack Dongarra)氏は、「NVIDIAのチップが最も多く採用された背景には、ソフトウェアの影響が大きい。ソフトウェアの多くが、NVIDIAのCUDA環境で開発されているためだ」と述べている。同氏は、編さん者の1人としてTOP500リストの作成を手掛けた。
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