ルネサスの新たな事業方針では、マイコンとアナログ&パワー半導体の両事業に注力し、SoC事業は民生用機器向けからの撤退を含めさらなる選択と集中を図ることとなった。また、2011年度の売上高については、上期が東日本大震災の影響で落ち込むものの、下期は前年度並みに回復する見込みだ。
ルネサス エレクトロニクスは2011年8月2日、東京都内で記者会見を開き、今後の事業方針について説明した。
ルネサスは、2010年7月に、2012年度までの経営戦略を発表している。今回発表された事業方針では、この経営戦略を基に、市場変化への対応や非中核事業からの撤退の加速、複数の工場で同一のプロセスをカバーするファブネットワークの構築によるBCP(事業継続計画)の強化などが盛り込まれている。
ルネサスの社長を務める赤尾泰氏(図1)は、「今後の事業方針で重視するのは、新興国を中心とする海外市場、そして省エネを促進するスマート社会だ。特に、スマート社会は、先進国、新興国で同期して広がり、半導体市場をけん引する大きな力となるだろう」と語る。
スマート社会関連では、スマートメーター、インバータ家電、LED照明向けのマイコンやアナログ&パワー半導体(以下、A&P)製品の開発や提案活動に注力する。スマートメーターでは、世界シェア30%の計量用マイコンにアナログ機能を搭載するとともに、ゲートウェイやルーターなどの通信機器で実績のある通信用マイコンなどを併せて提案していく。インバータ家電とLED照明では、高いシェアを持つマイコンに最適なA&P製品を提供するキットソリューションによる展開を強化する方針である。
新興国市場については、すでに発表した2012年度までの経営戦略に基づく取り組みによって大きな成果が得られている。2010年における中国のマイコンの市場規模は、前年比85%増の37億7300万米ドルだった。ルネサスは、この拡大する中国のマイコン市場において、2010年のシェアを前年比5ポイント増の22%に伸ばすことに成功した(図2)。これは、「中国国内で企画、開発、生産、販売を一貫して行うことにより、現地の需要に合致する製品をタイムリーに投入できる体制を構築できたことが大きい」(赤尾氏)という。さらに、この中国での経験を生かして、インド市場とブラジル市場でも現地密着を進めて売り上げ拡大を図る方針である。
また、A&P製品の海外市場における拡販にも注力する。各地域においてマイコンのシェアがトップクラスであるのに対して、A&P製品は国内市場以外でのシェアが非常に低い。そこで、先に述べたインバータ家電やLED照明の取り組みと同様に、高シェアのマイコンに最適なA&P製品を提案する活動を強化することにより、海外市場でのA&P製品のシェアを引き上げる。そのために、2011年4月に、マイコンとA&P製品、双方のマーケティング機能を統合したマーケティング本部を発足させている。
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