事業別で見た場合に、大幅な方針変更があったのがSoC(System on Chip)事業である。2012年度までの経営戦略では、携帯電話機、民生用機器、車載情報機器、産業用機器向けの製品により、2012年度まで年平均10〜15%の売上高の成長を目指すとしていた。今回の発表では、「テレビをはじめとする民生用機器など製品開発サイクルの短い市場からは撤退する」(赤尾氏)として、売上高を拡大するのではなく、選択と集中による利益の向上を目指す方針を打ち出した。注力領域とするのは、社会インフラ、産業用機器、セットトップボックスなどである。また、子会社のルネサス モバイルが扱う携帯電話機や車載情報機器向けSoCについても注力を継続する。
マイコン事業については、2012年度までの経営戦略から変更はほとんどない。マイコンの世界市場が、2010年〜2015年までに年平均で7%成長するのに対して、ルネサスは同じ期間に年平均で9%の成長を目指す。世界シェアは、2010年の29%から、2015年には35%まで増加することになる。また、赤尾氏は、マイコンのプロセッサコアの統合について、「8ビット/16ビットコアについては『RL78』に一本化した。高性能の32ビットコアについては現在検討中だ」と述べた。なお、同社のプロセッサコアを1つの開発ツールで扱えるようにする取り組みを紹介する際に、旧ルネサス テクノロジの32ビットコア「SHシリーズ」はサポート対象に含まれていなかった(図3)。
A&P事業の方針では、世界シェアの目標値が示された。2010年の世界シェアで見ると、パワー半導体は7.5%で、アナログICは3.9%となっている。これらの値を、2015年には、パワー半導体で10%以上、アナログICで5%以上にすることが目標となる。そのために、パワー半導体では、車載機器や産業用機器向けに、耐圧が600V〜1800VのMOSFETやIGBTの製品数を増やす。アナログICでは、車載機器向けのASICやASSPの製品展開を加速させていくことが施策の中心となる。なお、A&P事業においても、「製品開発サイクルの短い市場からは撤退する」(赤尾氏)方針である。
赤尾氏は、「マイコン事業とA&P事業への注力を加速し、2012年度に通期で営業利益と純利益が出るようにする。そして、2013年度〜2014年度には中期目標である営業利益率10%を達成できるようにしたい」と述べた。同氏が、営業利益率10%を達成した際に想定している年間の半導体売上高の規模は約1兆円である。もし、2014年度までにマイコン事業の売上高が年平均で9%成長したと仮定すると約5180億円になる。同様に、A&P事業の売上高が年平均で7%成長した場合(2012年度までの経営戦略における予測の最低値)には約3675億円となる。これらを、営業利益率10%達成時の売上高である1兆円から差し引いた約1145億円がSoC事業の売上高となる(図4)。なお、2011年度通期のSoC事業の売上高は2350億円前後が予想されている。
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