次世代のWi-Fi規格として期待される「IEEE 802.11ac」。同規格に対応する無線LAN用ICの開発をリードしているのがBroadcomだ。
IEEE 802.11ac(以下、802.11ac)は、IEEE 802.11、同b、同a/c、同nに続く次世代のWi-Fi規格である。第5世代となることから、「5G(第5世代) Wi-Fi」とも呼ばれる。その最大の特徴は、ギガビット/秒レベルの伝送速度を実現できることにある。
この802.11acに対応する無線LAN用ICの開発をリードしているのがBroadcomだ。同社は、米国のネバダ州ラスベガスで開催された「2012 International CES(Consumer Electronics Show)」(2012年1月10〜13日)において同規格に準拠したIC群を発表し、実働デモを披露した(図1)。
Broadcomが今回発表したのは、取り扱えるデータストリームの本数や想定用途などが異なる4品種である。いずれも変調方式に256QAMを採用しており、帯域幅については現在普及している802.11n規格の2倍に相当する80MHzをサポートする。4品種の内訳はこうだ。アクセスポイント/ルータ装置向けの品種で、3ストリームに対応し最大1.3Gビット/秒の伝送速度を実現する「BCM4360」。セットトップボックスを狙った品種で、2ストリームに対応し伝送速度が最大867Mビット/秒の「BCM4352」および「BCM43526」。ノートPCや携帯電話機を想定した、1ストリーム対応で伝送速度が最大433Mビット/秒の「BCM43516」である。
現在、無線ネットワークを通じた動画コンテンツの配信や視聴が世界中で爆発的に増加している。Broadcomのモバイル&ワイヤレス部門でシニアバイスプレジデントを務めるMichael Hurlston氏(図2)によると、「米国では、現在、無線ネットワークを通じて配信/視聴されるコンテンツの半分を動画が占めている。2015年までにはこれが91%程度まで増加する見込みだ」という。そのため、より広い帯域幅やより高速な伝送速度が求められるようになっている。
こうしたニーズをくみ取り、Broadcomは、802.11acに対応した製品の開発に早くから取り組んできた。Hurlston氏は、「新製品の開発サイクルは通常1年間だが、今回発表した製品はかなり新しい要素の多い規格に対応するものだったので、2年間を費やした」と述べる。802.11acは、IEEE 802.11委員会が現在も策定を進めている段階で、Broadcomは同規格のドラフト版に基づいて上記のICを製品化した。Hurlston氏は、「当社は、競合他社に比べて6〜9カ月先行している。ネットワークの分野において、これだけの期間先行するというのは、低コスト、低消費電力、高性能な802.11ac対応製品を引き続き開発していく上で、非常に有利である」と説明した。
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