日本メクトロンは、圧力センサー内蔵のフレキシブルプリント配線板(FPC)を開発した。屈曲させてさまざまな曲面に貼り付けられることや、既存のFPCの製造設備がそのまま使えることが特徴だという。
今まで個別のチップで実現されていたセンシング機能を、フレキシブルプリント配線板(FPC)内部に無数に配置できたら、どのようなアプリケーションを実現できるだろうか。人間の動きを正確にロボットに学習させたり、モバイル機器の面白いユーザーインタフェースを生み出すことができそうだ。
フレキシブルプリント配線板(FPC)を手掛ける日本メクトロンは、わずか数mmの間隔でFPC内部に圧力センサーを配置する触覚センシング技術を開発し、「第13回プリント配線板EXPO」(2012年1月18〜20日、東京ビッグサイト)で展示した(図1)。特徴は、薄く小型のセンシング構造であるためFPCを屈曲させて曲面に貼り付けられることや、既存のFPCの製造工程をそのまま使えることである。「このような特徴を兼ね備えた圧力センサー内蔵FPCは業界初」(同社)という。
例えば、この圧力センサー内蔵FPCを手にまんべんなく貼り付けて力の入れ具合を測定し、その測定データをロボットに学習させるといった用途がある。マッサージをするときの力の入れ具合をロボットに教え込んだり、ゴルフのグリップを握ったときの状態を正確に把握したりできる。この他、モバイル機器に貼り付ければ、FPCに人の指が触れた位置や握ったときの強度を、機器制御に使うことも可能である(図2)。
圧力をセンシングする検出原理はシンプルだ。厚さが100μm程度のFPCの内部に、わずかな空隙(くうげき)を作り込む。FPCの表面と裏面を導電性にしておけば、空隙部分に人が触れて押し込むことで、表面と裏面が接触し、導通状態になる。従って、FPCの導線の抵抗率変化をモニタリングすることで圧力を検出することができる。表面と裏面の接触面積と導線の抵抗率変化は、対応関係があるため、圧力のアナログ的な変化も捉えることも可能だ。
空隙部分を作り込んだ導線のラインは1つの圧力センサーに相当する。このため、このラインを幾つもFPCに形成することでセンサーの数を増やすことができる。「圧力センサー内蔵FPCには、幅が25μmの配線が何本も並列に配置されている」(同社)。
圧力のセンシング原理はシンプルだが、FPC内部にわずかな空隙を作り込む技術や、人に押されたとき以外の屈曲に対する誤検出を防ぐ構造に独自性がある。現在、限定的にサンプル品を提供し、提供先から製品化に向けたフィードバックをもらっている段階だという(図3)。「技術的には完成しており、今後は耐久性や信頼性といった製品化を目指した検討を進める」(同社)。
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