マイコン世界シェア首位のルネサスが記者会見を開催し、40nm世代のフラッシュ内蔵マイコンの製造をTSMCに委託すると発表した。国内では那珂工場に同世代のラインを構築しており、同工場での製造も続ける。週末に報道があった、1万数千人規模の人員削減については「決定した事実は無い」としかコメントしなかった。
ルネサス エレクトロニクスとTSMCは2012年5月28日に東京都内で記者会見を開催し、マイコン分野で両社の協業関係を拡大すると発表した。具体的には、フラッシュメモリ内蔵マイコンに向けた40nm世代の半導体プロセスを両社が共同で開発し、ルネサスが設計した同プロセス利用のマイコンをTSMCが受託生産する。ルネサスはこの40nmプロセスを、各種家電機器や自動車の制御に使うマイコンに適用する考えで、「既にこのプロセスを適用したマイコンの試作を進めており、2012年末までに製品のサンプル出荷を始める」(ルネサスの執行役員でMCU事業本部長を務める岩元伸一氏)という。
ルネサスは、以前からシステムLSIの製造を一部TSMCに委託していた他、2011年末には90nm世代のマイコンについてTSMCに生産を委託する契約を結んでいた。ただし今回発表した協業は、そうした旧来の枠組みからさらに一歩踏み込んだものだという。すなわち今回の協業では、ルネサスが従来から自社のマイコン内蔵用フラッシュメモリに適用していた、MONOS(Metal Oxide Nitride Oxide Silicon)構造を採る同社独自のトランジスタ技術に、TSMCのCMOSロジック回路製造技術を組み合わせて、マイコンに適したフラッシュ混載プロセスを新たに開発する。90nmマイコンにおける両社の協業関係は、ルネサスが自社工場で確立した製造プロセスをTSMCの製造ラインに移植して生産を委託する形にとどまっていた。
さらに今回の協業では、将来的に、両者が共同開発したマイコン用プロセスをルネサス以外のファブレス半導体ベンダーや垂直統合型の半導体ベンダーにライセンス供与することも検討しており、「現在、そのスキームについて議論しているところだ」(岩元氏)という。ルネサスとしては、「単にMONOSトランジスタ技術をIP化してライセンスするだけ、といった形態にはとどめないつもり」(同氏)と述べており、製造プロセスのみならず、プロセッサコアのIPを提供する可能性についても否定していない。
今回の協業拡大について両社は、マイコン市場そのものの拡大で2社の狙いが合致したと説明する。ルネサスは、「当社は既に、汎用マイコンと車載マイコンの両方で世界第1位の市場シェアを獲得している。さらなる事業拡大を図るに当っては、既存のマイコン市場での自社のシェア拡大に加えて、マイコン市場そのものの拡大に取り組む必要がある」(岩元氏)との認識を示した。一方TSMCは、「当社はマイコン向けのフラッシュメモリ混載プロセスの提供を0.5μm世代に開始し、最新の90nm世代に至るまで既に15年を超える実績がある。2011年には8インチウエハー換算で100万枚の事業規模に達した。このプロセスの売上高は明かせないが、今回の協業で大きく伸びることを期待している」(同社のスペシャルティー・テクノロジー担当ディレクターを務めるチェンミン・リン氏)と述べた。
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