29円という有機薄膜太陽電池の製造コストは、他の方式の太陽電池と比較してどの程度の水準にあるのだろうか。小西氏の試算と米エネルギー省の分析*3)によれば、図1のようになるという。変換効率10%の有機薄膜太陽電池は、変換効率12%の薄膜Si太陽電池と比較して、製造コストは約半分であることが分かる。
*3) 米エネルギー省の公開資料 "$1/W Photovoltaic Systems"(PDF 28ページ)
29円を実現する工場の量産規模は、年産1GW。年産18MWのラインを56本並列に並べ、ロールツーロール法で製造する。ちょうど新聞紙にインクで紙面を印刷するようなイメージだ。塗布技術を使う全自動一貫工場を仮定した(図2)。
製造するサブモジュールは大型であり、幅1.2m、長さ22mのシート内に1m角の有機薄膜太陽電池を20枚作り込む。最大出力は2kW(端子間電圧は900V)だ。なお、1m角の太陽電池は幅17.8mm、長さ1mの太陽電池セル50枚から構成し、開口率は89.5%として試算した。
太陽電池モジュールの構造や性能、寿命もコスト試算に跳ね返ってくる。製造するセルの構造を図3に示した。製造時には図2に示したセル工程において、別々に製造したセルA部材とセルB部材を重ね合わせてサブモジュールを作り上げる。サブモジュールの上下にSi太陽電池でも多用するEVA(エチレン酢酸ビニル共重合樹脂)を挟み込み、最上部には汚れを落ちやすくするためにETFE(テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体)フィルムをかぶせる。
試算ではモジュールの変換効率を10%と仮定している。これを実現するにはセル変換効率12.1%を実現する必要がある。「実験室レベルでは11%台が実現できているため、2017年に12.1%という数値は現実的だろう」(小西氏)。
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