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太陽電池の製造コストはどうなる――プラスチック製には勝機があるのかエネルギー技術 太陽電池(2/3 ページ)

» 2012年05月30日 19時45分 公開
[畑陽一郎,EE Times Japan]

他の方式に打ち勝つ製造コスト

 29円という有機薄膜太陽電池の製造コストは、他の方式の太陽電池と比較してどの程度の水準にあるのだろうか。小西氏の試算と米エネルギー省の分析*3)によれば、図1のようになるという。変換効率10%の有機薄膜太陽電池は、変換効率12%の薄膜Si太陽電池と比較して、製造コストは約半分であることが分かる。

*3) 米エネルギー省の公開資料 "$1/W Photovoltaic Systems"(PDF 28ページ)


図1 各種太陽電池の製造コスト比較 縦軸は有機薄膜太陽電池の製造コストを1としたときの相対値。%はモジュール変換効率を表す。結晶系Si太陽電池の値は注3の資料から、それ以外は2010年に小西氏などが発表した値である。出典:産業技術総合研究所

どうやって製造するのか

 29円を実現する工場の量産規模は、年産1GW。年産18MWのラインを56本並列に並べ、ロールツーロール法で製造する。ちょうど新聞紙にインクで紙面を印刷するようなイメージだ。塗布技術を使う全自動一貫工場を仮定した(図2)。

図2 製造設備の概略 1本のラインはセル工程とサブモジュール工程、モジュール工程という3種類の工程からなり、全工程を一貫で生産する。出典:産業技術総合研究所(クリックで拡大)

 製造するサブモジュールは大型であり、幅1.2m、長さ22mのシート内に1m角の有機薄膜太陽電池を20枚作り込む。最大出力は2kW(端子間電圧は900V)だ。なお、1m角の太陽電池は幅17.8mm、長さ1mの太陽電池セル50枚から構成し、開口率は89.5%として試算した。

どのような太陽電池を作るのか

 太陽電池モジュールの構造や性能、寿命もコスト試算に跳ね返ってくる。製造するセルの構造を図3に示した。製造時には図2に示したセル工程において、別々に製造したセルA部材とセルB部材を重ね合わせてサブモジュールを作り上げる。サブモジュールの上下にSi太陽電池でも多用するEVA(エチレン酢酸ビニル共重合樹脂)を挟み込み、最上部には汚れを落ちやすくするためにETFE(テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体)フィルムをかぶせる。

 試算ではモジュールの変換効率を10%と仮定している。これを実現するにはセル変換効率12.1%を実現する必要がある。「実験室レベルでは11%台が実現できているため、2017年に12.1%という数値は現実的だろう」(小西氏)。

図3 製造するセルの構造 製造時にセルA部材を含む上部とセルB材料を含む下部(図左)を接着して、サブモジュールを作り上げる。図右はサブモジュールの上下にさまざまな部材を配置した完成状態のモジュールの層構造。なお、セルの図で赤い部分は低融点金属、濃い緑は発電層、濃い灰色は裏面電極、薄い灰色は透明導電膜、白抜きは集電電極を示す。セルの変換効率が12.1%のとき、サブモジュールの想定電圧は45V、電流は3.31A、最大出力は99.8Wと試算した。出典:産業技術総合研究所(クリックで拡大)

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