SSDのコストを劇的に削減しながら、性能と寿命も飛躍的に向上させられる技術が登場した。フラッシュメモリに新世代メモリ素子であるReRAMを組み合わせるハイブリッド型のSSDである。この成果を達成できたのは、これらメモリ素子自体の改良ではなく、データの読み書きを制御するコントローラを工夫したためである。
ノートPCをはじめとした民生機器のみならず、データセンターにも導入が進むSSD(Solid State Drive)。その実質的なコストを1/7程度と劇的に削減できる新技術を、中央大学 理工学部 教授の竹内健氏らの研究グループが開発した。SSDの記憶素子として一般的に使われているNAND型フラッシュメモリは、HDDに比べて書き換え可能回数が少なく、それによってSSDの寿命が決まってしまう(参考記事)。新技術を適用すればその寿命を約7倍に延ばすことができ、データセンターにおけるSSDの交換頻度を1/7に抑えられる。従って実質的なコストを1/7程度に削減できるというわけだ。
さらに、この新技術を使えば、コスト低減に加えて、読み書き速度を11倍と飛躍的に高めるとともに、消費電力を93%と大幅に低減することが可能だという。すなわちデータセンターの運営者は、SSD自体のコスト低減に加えて、電気料金を含めた総運用コストの削減も期待できる。
NAND型フラッシュメモリに、新方式の次世代メモリである「ReRAM」(Resistive RAM:抵抗変化メモリ)を組み合わせたハイブリッド構造のアーキテクチャを採用し、独自の制御アルゴリズムを適用することで実現した。フラッシュメモリもReRAMも、記憶素子自体を改良したわけではない。2012年6月12〜15日に米国ハワイ州で開催される半導体デバイスに関する国際会議「2012 Symposia on VLSI Technology and Circuits」で詳細を発表する。
竹内氏らの研究グループが今回開発したSSDのコンセプトは、フラッシュメモリと次世代メモリそれぞれの得手不得手を考慮し、互いを補い合うように組み合わせて、SSDモジュールとしての書き換え速度と消費電力、寿命という価値指標を飛躍的に高めるというものだ。
一般に、フラッシュメモリは記憶容量が大きく、低コストで利用できるというメリットがある半面、書き換え時間は約1msと遅い。書き換え回数についても、「SSD用の品種では5000回程度にとどまる」(竹内氏)。一方、同研究グループが今回次世代メモリとして採用したReRAMは、書き換え時間が50ns程度と大幅に短く、大きな電流を消費する時間が短く済むので、消費電力を低く抑えられるという特徴がある。ただし記憶容量については、現状では比較的小さい規模にとどまっている(参考記事)。
同研究グループは、SSDに書き込むデータのサイズや書き換えの頻度など、データ自体の特性を把握した上で、そのデータを書き込むメモリの領域を最適に制御する独自のアルゴリズムを開発した。サイズの小さなデータや、書き換え頻度の高いデータを、選択的かつ自動的にReRAMに記憶するアルゴリズムである。これにより、SSDにおけるフラッシュメモリの書き換え回数を低く維持するとともに、フラッシュメモリのセルアレイ内にデータが物理的に散らばって記録されてしまう断片化(フラグメンテーション)の現象を抑制した。フラッシュメモリの断片化に起因した書き換え速度の低下を回避できる上に、フラッシュメモリのデータの書き換え頻度と書き換えに要する消費電力を低減できる。その結果、SSDモジュールとしての書き換え速度と寿命を大幅に向上させるとともに、消費電力を劇的に削減できることを確認した。
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