ルネサス エレクトロニクスが収益基盤の強化策を発表した。ホームマルチメディア(デジタル家電)向けSoC(System on Chip)の新製品開発中止や、国内生産拠点再編の詳細決定が中心となっている。これらの施策により、2014年度に営業利益率10%以上の達成を目指す。
ルネサス エレクトロニクスは2012年8月2日、東京都内で会見を開き、収益基盤の強化策を発表した。ホームマルチメディア(デジタル家電)向けSoC(System on Chip)の新製品開発中止などにより事業構造の最適化を進めるとともに、2012年7月3日に発表した国内生産拠点の再編(関連記事1)を加速して外部生産委託の比率を高めるといった内容が中心となっている。これらの施策により、2014年度に営業利益率10%以上の達成を目指す。
同社社長の赤尾泰氏は、「当社は2010年4月の発足(ルネサス テクノロジとNECエレクトロニクスの合併)以降、各種施策を着実に実行してきたが、現在は、東日本大震災や欧州・中国の市況悪化、国内民生用機器市場の変化、長引く円高などさまざまな市場・競争環境の変化に直面している。そこで従来計画を加速するとともに、反転攻勢に向けたさらなる施策を進めることとした」と語る。
事業構造の最適化では、これまで「製品開発サイクルの短い市場からは撤退する」としていたSoC事業について、デジタル家電向けSoCの新製品開発を全面的に中止することを決めた。ただし、既存品の販売とサポートは継続する。これにより、SoC事業の研究開発費のうち、デジタル家電向けSoCが占めていた15〜20%分を圧縮できるという。
これまで、デジタル家電向けSoCについては、不採算分野から撤退する一方で、セットトップボックス(STB)など成長が期待できる市場向けの製品の開発を続けていた(関連記事2)。今回の決定により、デジタル家電向けSoCのブランド名称である「R-Home」は事実上消滅する。
国内生産拠点の再編については、2012年7月3日の発表で、譲渡または閉鎖の対象になっていた8工場(9ライン)に関する詳細な計画が定まった。
まず1年間をめどに譲渡を検討しているのが、前工程では、鶴岡工場(山形県鶴岡市)の12インチ(300mm)ウェーハラインと山口工場(山口県宇部市)の6インチ(150mm)ウェーハライン。後工程では、函館工場(北海道七飯町)、青森工場(青森県鶴田町)、福井工場(福井県坂井市)である。
次に3年間をめどに譲渡もしくは閉鎖を検討しているのが、鶴岡工場の前工程5インチ(120mm)ウェーハラインと、熊本錦工場(熊本県錦町)の後工程ラインである。
2工場の閉鎖も決まった。後工程を担当する柳井工場(山口県柳井市)は3年間をめどに、山口工場の後工程ラインは2013年度下期に閉鎖される。既に閉鎖が決まっていた、甲府工場(山梨県甲斐市)の前工程6インチウェーハラインと高崎工場(群馬県高崎市)の前工程5インチウェーハラインの閉鎖時期も決まった。甲府工場の6インチラインは2014年度下期、高崎工場の5インチラインは2013年度下期を予定している。
これらの国内生産拠点の再編は3年間をめどに進める。今回の会見で報道陣からは、鶴岡工場をはじめ売却先に関する質問が相次いだが、「譲渡対象の工場で生産している製品を、そのまま継続して生産委託できる企業に売却することになる」(赤尾氏)と述べるにとどめた。
生産拠点の再編を進めることで、外部生産委託の比率を高められる。前工程は2011年度末の15%強から40%弱に、後工程は、マイコンやSoCなどのLSI系が30%弱から50%弱に、アナログICやパワー半導体などのディスクリート系が30%弱から約40%に上昇する。これと同時に自社工場では、前工程が8インチと12インチのウェーハを中心とする大口径化が進み、後工程はほとんどが海外生産になる見込みだ。
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