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「Xperia NX SO-02D」 透明パーツが印象的なボディの“中身”を分解して知るバラして見ずにはいられない(1/3 ページ)

ソニーモバイルコミュニケーションズが鳴り物入りで発表したフラッグシップモデル「XPERIA S」のドコモ向けモデル「Xperia NX SO-02D」は、Floating Prismを用いたデザインが特長のモデル。登場からまだ1年も経っていないモデルだが、この頃のAndroidスマートフォンはどんな構成だったのか。中身を確認してみた。

» 2012年12月04日 21時00分 公開
[柏尾南壮(フォーマルハウト・テクノ・ソリューションズ),ITmedia]

 NTTドコモが2012年2月に発売した「Xpeira NX SO-02D」は、ソニーモバイルコミュニケーションズ製のグローバルモデル「XPERIA S」の国内版だ。発売当初はOSがAndroid 2.3だったが、先頃Android 4.0へのバージョンアップが始まった。

Photo Xperia NX SO-02D

 Xperiaはもともとソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ(SEMC)の端末として知られていたが、2011年10月に、ソニーがエリクソンの保有するSEMC株式を取得し、SEMCはソニーの子会社、ソニーモバイルコミュニケーションズとなった。これらの出来事と時間的に近かったせいか、ボディや背面のカバー内など随所に「Sony Ericsson」の社名が残っており、過渡期の端末ならではの貴重な風景といえる。

※初出時に「Xperia NX SO-02Dの外観からは旧社名が消え、ロゴマークとシンプルな「Xperia」の文字のみが残されている。」との記載がありましたが、誤りでした。お詫びして訂正いたします。(12/5 1:48)

 ソニーモバイルの強みは何といっても世界中で携帯電話やスマートフォンを販売している点だ。洗練されたデザインは多くのファンを持つ。2011年の生産ランキングは世界のトップ10に入り、国内部品メーカーの推定によると生産台数は3500万台を超え、そのほとんどスマートフォンだ。さらにソニーは通信技術も自社で保有するため、電話機としての完成度も高い。ちなみにパートナーであったエリクソンは、日本で携帯電話用の基地局など、インフラ事業を展開している。通信機と基地局のプロが手を結んでいたソニー・エリクソンは最強のコンビであったのかもしれない。

METAL MASTERの感動再び

Photo Whiteの質感は、ソニーの超高級カセットテープ「METAL MASTER」を連想した

 Xperia NX SO-02Dを最初に手にした時、1990年頃にソニーが発売した超高級カセットテープ「METAL MASTER」を連想した。真っ白なセラミック筐体で覆われたこのカセットテープは、当時約2000円した。ウォークマンには重たすぎ、メタルテープ10本分の価格ながら、このテープに録音して聴くお気に入りの曲は、何となく特別というワクワク感があった。ひんやりした質感、心地よいザラツキ、ずっしり重たい高級感はSO-02Dの手触りとよく似ている。

 携帯電話やスマートフォンの機種選びでは、まず機能が優先され、外観は残った選択肢から選ばれることもあるとされるが、ソニー製品については、その魅力的な外観が機種選びの主要なポイントとなる人も多いだろう。SO-02Dはワンセグやおサイフケータイ機能に対応していない。「それでもXperiaが好き」。これが世界で売れる理由なのかもしれない。

デザイン重視の結果か? バッテリーの着脱は不可能

 通常、携帯電話やスマートフォンの背面にバッテリーカバーが取り付けられるのは、ユーザーがカバーを取り外してSIMカードやMicroSDカードを取り付けたり、バッテリーを交換したりするためである。最近では防水対応端末が増え、水密構造を背面カバーに設けるものも多い。しかしSO-02Dでは、microSDカードスロットは搭載されておらず、バッテリーも内蔵式でユーザーから見えない場所に配置され、背面カバーを開けて操作できるのはSIMカードの着脱だけだ。さらに防水対応ではないため、SIMカードの操作だけであれば、他社の一部機種のようにボディ側面にカードスロットを設ける方がシンプルと思える。

背面のカバーは着脱できるのだが、バッテリーの交換はできない。microSDカードスロットもないが、カバーを開けてアクセスできるのはSIMスロットだけだ

 しかし各国の電波に関する法令の要求を考慮に入れると、SO-02Dが背面カバーを取り外すスタイルにした理由を推察できる。世界各国には日本の電波法に準じる法律があり、通信機としての認証を受けると認証番号が発行され、基本的にはこの番号や付属文などを、かすれたりしない恒久的な方法で機器の外側から見えるように表示することが求められる(最近では、一部ディスプレイなどに表示する方法も許容されている)。例えば日本では郵便マークのような「技適(技術基準適合証明)マーク」と認証番号、米国では連邦通信委員会の認証番号(FCC ID)、カナダではIndustry Canada が発行する認証番号(IC ID)などがあり、端末を使用しようとするそれぞれの国で認証を受ける必要がある。世界中で使われる事を想定している現在の携帯電話やスマートフォンは、さまざまな国や機関の認証番号を持っており、これを印刷表示するには相応のエリアが必要である。

 もしユーザーによる取り外し可能なバッテリーカバーを設けないとすれば、これらの認証は端末本体のどこかにかすれないようにくっきりと印刷しなければならない。この場合、印刷場所は自然と端末本体裏側になる。iPhoneなどはこのスタイルを採用している。しかしSO-02Dの筐体はシンプルで印刷も最小限。ここに細々とした情報を印刷するのは美しくない……。そのような判断があったのかもしれない。

 背面カバーを取り外すと、他の機種ではバッテリーが搭載されている場所に比較的大きなシールが貼付されており、日本の技適マークをはじめFCC ID、IC IDなど各国の法令に基づく認証番号や記号が印刷されている。このシールははがすとバラバラになる特殊なもので、不正改造や認証番号の悪用を防止する役目を持つと思われる。中国の山寨機(当局の規制の及ばない端末)や正規といわれている3G(第三世代)携帯電話やスマートフォンには、ただの紙に番号を印刷して端末に貼っているものもあるが、これらと比べるとかなり凝った仕様だ。

 ちなみにSO-02Dのバッテリーは、一般的なリチウムイオンバッテリーではなく、リチウムイオンポリマーバッテリーだ。リチウムイオンバッテリーは外装が金属の角型(缶)であるため強度があり、内部には電解液が満たされている。一方リチウムイオンポリマーバッテリーは電解液に高分子ポリマーを混ぜて安定性を高め、外装はレトルト食品のパウチのような柔らかいラミネート加工になっている。このタイプの最大のメリットは、さまざまな形状に対応が可能な点だ。例えば星型の端末が登場したとしても、リチウムイオンポリマーバッテリーなら、その枠にはまるような幾何学的な形状のバッテリーを作ることも可能だ。

 一方で、リチウムイオンバッテリーとは異なり、リチウムイオンポリマーバッテリーは製造プロセスを自動化できないため、製造コストが高い点が泣き所だ。さらに取り扱いにも注意が必要になる。ラミネート加工された外装が損傷して内部で液体が混ざり合うと、爆発的な反応を起こす場合がある。そうするとガスが発生し、ラミネートパウチが膨らむ。ガスを逃がす弁あるため、大抵はこの弁がガスを抜いてことなきを得るが、最悪の場合は発火したり爆発したりする。外装が壊れやすいリチウムイオンポリマーバッテリーにはより注意深い取り扱いが求められる。

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