Samsung Electronicsが、計11億米ドル規模のシードファンドを設立する。材料、半導体、インフラといった分野に積極的に投資し、技術革新を進めるという。業界関係者は、こうしたSamsungの姿勢について、「10年先を見据えた適切な戦略」だとコメントしている。
Samsung Electronicsは、新たな研究開発拠点「Samsung Strategy and Innovation Center(SSIC)」を開設した。さらに、総計11億米ドル規模のシードファンドを2つ、設立する。運用資金が10億米ドルの「Samsung Ventures America Fund」と、1億米ドルの「Samsung Catalyst Fund」である。
過去数年間、ベンチャーキャピタルの投資対象は、ほとんどがオンラインサービスやソフトウェア分野の企業だった。こうした分野の新興企業は、少ない投資で、短期間に大きなリターンを回収できるからだ。こうした傾向を受け、資金調達を模索するハードウェア関連の新興企業、特に半導体企業は厳しい状況に陥っていた。
SamsungのDevice Solutions部門の最高戦略責任者であり、SSICを統括するYoung Sohn氏は、「シリコンバレーは技術革新の中心地であり、当社はその一端を担いたいと考えている。近年、基礎科学や半導体、材料、ディスプレイインフラへの投資が減少しているが、当社はこうした技術を確かなものにしていきたい」と述べている。
Samsungは、米国テキサス州オースティンやマサチューセッツ州ボストン、英国のケンブリッジにもSSICを開設する計画だ。SSICはインキュベーター(起業支援)ではないが、Samsungの事業強化につながるような革新的な技術を支援していくという。さらに、Samsungの技術力強化に向け、買収も行う。
今回Samsungが創設するSamsung Catalyst Fundは、主にコンポーネント技術に対するシード投資を行うが、クラウドインフラやモバイルプライバシー、モバイルヘルス、ユーザインタフェース、モノのインターネット(IoT:Internet of Things)といった幅広い分野にも投資していく。Samsungは、創設する2つのシードファンドとは別に、10億米ドルを上回る資産を運用するコーポレートベンチャーファンド「Samsung Ventures」を既に有している。Samsung Venturesは、2012年に20社に対し1億6000万米ドル相当の投資を行っており、2013年には、より多くの投資を行う計画だという。
Sohn氏は、「当社は毎年、ベンチャー投資を拡大している。現時点で米国のコーポレートベンチャーファンドのトップ3に入っているのではないか」と話している。
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