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映画の世界から読み解くAIの“ココロ”“AI”はどこへ行った?(2)(1/2 ページ)

SF映画には、“コンピュータそのもの”という機械から人間と見分けがつかないようなロボットまで、さまざまな人工知能(AI)が登場する。これらのAIは、まったく意思を持たず、プログラム通りにしか動かないものや、感情を持って涙を流すもの、暴走して人間を襲うものまで、“性格”もさまざまだ。“ココロ”を持つようなAIの研究は進んでいるのだろうか。

» 2013年09月12日 07時00分 公開
[世古雅人カレンコンサルティング]

ヒト型ロボットの人工知能は3歳児!?

 2013年6月、“世界で最も賢いロボット”とうたう「Adam Z1」の開発資金を募っているという記事を見かけた。その記事には、Adam Z1は「3歳児相当の知能を持つ」と書かれていたが、筆者はふと疑問に思った。

 というのも、筆者が人工知能(AI)に関心を持ち始めた1980年代中頃で、既に、3歳児相当の知能が開発研究されていると何度か耳にしたことがあったからだ。普通に考えればつじつまが合わない。「30年近く前の3歳児は、今の尺度で知能を測ると3歳未満である」……こんなことがあるはずはない。この30年間でどれほど技術が格段に進歩しても、3歳児が急激な進化を遂げるには短すぎる時間だからだ。

 つまり、「“○歳児並みの知能”という表現が、そもそもいいかげんである」というのが筆者なりの結論である。ただし、これはロボットの分野に限定した場合だ。医学的にはきちんと知能を定義する物差しがいくつもあり、それに照らし合わせて「3歳児並みの知能」とうたうなど、きちんとした根拠のあるものは納得がいく。30年前と今と、同じ物差しで知能を測ったわけではないので一概には言えないが、概して、人工知能、特にヒト型のロボットに関しては、知能の物差しはいいかげんなようだ。

「Adam Z1」は、Hanson Roboticsのヒト型ロボット「Zeno」の第1号である(クリックで拡大) 出典:Hanson Robotics

 したがって、「世界で最も賢いロボット」という記事で、何を基準に“最も賢い”と決めたのかツッコミを入れてみたい気もするが、「最も賢いロボットですら3歳児相当の知能」とも取れるわけで、これを「すごい!」と受け取るか、「たいしたことない」と受け取るかは、人それぞれである。個人的には、先述した“知能の基準の物差し”を除外して意地悪く言えば、「30年間進歩してないじゃん」と思ってしまうのである。

 余談だが、「Adam Z1」は、かわいくない顔をしている(こう思うのは筆者だけ?)。そもそも欧米人がロボットを作ると、こんな感じの顔になっちゃうのかなぁと……。ヒト型と言っているのだから、もっと人間に近い顔にすればいいのにと思うものの、よりダイナミックに豊かにロボットの表情を再現するには、目や口などの可動部分を大きくした方が都合がいいのだろう。

 一方で現実から少し目を離し、映画の世界をのぞいてみると、カッコいいロボット、魅力的・魅惑的なロボット、ちょっとおっかないロボットなどが登場する。こうしたロボットは、それらのロボットに搭載された人工知能をつかさどるコンピュータと一緒に登場するものが多い。

映画の世界で見る人工知能とロボット

 第1回で、“スカイネット”と呼ばれる人工知能が登場する「ターミネーター」について触れた。これは1985年の映画だ。そこからさらにさかのぼること17年、1968年の「2001年宇宙の旅」には“HAL9000”と呼ばれる人工知能が登場している。スカイネットとHAL2000に共通しているものは、「人工知能が自我や意識を持ち、人間に反乱を起こす」という点だ。

 2000年以降の映画を例に挙げると、「バイオハザード」に登場する“レッド・クイーン”は、人間に反乱は起こさないまでも、ウイルス(映画内では“T-ウイルス”と呼ばれ感染力が強く、健常な人間をゾンビ化する)が研究所外に漏れないように、内部の研究員を全員、死に至らしめる。人工知能“E.D.I(エディ)”を搭載した戦闘機が登場する「ステルス」でも、落雷の衝撃で自我を持ち始めた人工知能が暴走してしまう。

 このように、映画の世界に登場するAI(人工知能から戻そう)はあまり良い役回りではないが、それぞれ開発当初の目的は、「人間のため、人類のため」であることは共通している。

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