「自分は英語が話せない」――。皆さんがそう思うときは、多かれ少なかれ米国英語/英国英語を思い浮かべているはずです。ですが、「英語」とは米国英語/英国英語だけではありません。英語は、世界中の国の数だけあるのです。もちろん日本にもあって、それは“Japanese English(日本英語)”に他なりません。そして、このJapanese Englishは、英米の2カ国を除けば概ね通じるものなのです。
われわれエンジニアは、エンジニアである以上、どのような形であれ、いずれ国外に追い出される……。いかに立ち向かうか?→「『英語に愛されないエンジニア』」のための新行動論」 連載一覧
この連載では毎回、私の過去のエピーソードなどから始めています。本日は2つご紹介させて頂きたいと思います。
米国赴任中の、独立記念日のお祭りの日だったと思います。
家族で大きな公園の打ち上げ花火を見にやってきて、屋台の兄ちゃんに注文をしました。
“コーク、プリーズ”
コカコーラでもペプシコーラでもなく、“コーク”です。
「おっと、まいったな。私もすっかり、アメリカナイズされちまったぜ」と、ちょっと悦に入っていたところ、その兄ちゃんが逆に尋ねてきました。
“One ?”(1つか?)
「え?何ですと?」と日本語で答えてしまった後、(しまった)と思いながら“Sure. One please”と言って、1本のコーラ瓶を受け取りました。
私のちょっと得意な気持ちは、たちまち台無しになってしまいました。そして、(「コーラ」と言えば、そんなもん、一本に決まっとるだろうが)と、その兄ちゃんに心の中で変な八つ当たりをしていました。
米国赴任中、こういう場面には、ちょくちょく出会いました。
前回お話した、“Yes, I don't.”に始まり、スーパーマーケットでは、レジが終わった後に言われる“Anything else?(他に何か御用は?)”に対して、「大丈夫だ」という意味で“Yes, thank you”と答え、レジのお姉さんを凍りつかせてしまったこともあります。(正解は“It’s O.K.”とか“No. Thanks”)
Do you mind if I open the window? (窓を開けてもいいですか)に対して、「ええ、構いませんよ」のつもりで“Yes, please”と答える(正解は“No, not at all”)などは、中学、高等義務教育過程では必ず出てくる、日本人の典型的な失敗例です。
つまり私は、学校で教えてもらった「このように答えてはダメ」の地雷を、米国赴任中に全部踏んできたのです。
私は、赴任先であるコロラド州の大学で、英語コースの入学試験を受けた際、『あなたは何年間、英語を勉強してきましたか』と言う質問に対して、
とは、書くことができませんでした。
恥ずかしかったからではありません。用意されていた回答の最高年数が『5年以上』だったからです。つまり、5年以上も英語を勉強している者は、100年間勉強しているものと同等であるという、暗黙の了解があったわけです。
しかし、高校卒業が大多数を占める昨今、『英語教育6年以下』の戦後生まれの日本人を見つけるのは、かなり難しいのではないかと思います。
こんにちは。江端智一です。
本日は、EE Times Japan編集部のご許諾を頂き、私の昔のコラムに大幅な加筆をして、前後半の2回に分けて再掲することになりました。
今回は、前回の予告通り、「『英語』という名称の言語は、もはや存在しない」というお話をさせて頂こうと思います。前編では、「『米国/英国英語』は捨ててしまおう」がテーマです。
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