成長の一途をたどってきたスマートフォン市場も、さすがに落ち着き始めている。フィーチャーフォンにも再び注目が集まるのと同時に、100米ドル未満のスマートフォンが登場するなど、スマートフォンの低価格化が進んでいる。
スマートフォン市場はこれまで、とどまることを知らず成長を遂げると考えられてきたが、今やその勢いに陰りが見え始めたようだ。
スペイン バルセロナで2014年2月24〜27日に開催された「Mobile World Congress(MWC 2014)」では、低価格帯の携帯電話機に再び注目が集まるという兆候が見られた。これまでスマートフォン市場では、あらゆる種類のオプション機能を搭載することによって戦いが繰り広げられてきたが、今ではそうした傾向が薄れつつある。その一方で、フィーチャーフォン市場をめぐる新たな競争が生まれている。業界専門家や市場調査会社は数年前に、フィーチャーフォン市場の成長を見放そうとしていたが、どうやらそうはならないようだ。
米国の市場調査会社であるIDC(International Data Corporation)でモビリティリサーチ部門担当プログラムバイスプレジデントを務めるJohn Jackson氏は、「価格が50米ドル以下の携帯電話機市場は、下位機種のスマートフォン市場の妥当性を判断するためにも重要だ。その市場規模を予測するには議論の余地があるが、数億台とまではいかなくても、数千万台規模には達するのではないだろうか」と述べている。
IDCが2014年2月26日に発表した「Worldwide Quarterly Mobile Phone Tracker(世界携帯電話機市場に関する四半期報告書)」によると、スマートフォン市場は現在、明らかに大幅な減速傾向にあるという。同社によれば、世界スマートフォン出荷台数は2014年に急激に減少し、2018年まで低迷が続くとみられる。さらに、平均販売価格も大幅に下落する見込みだ。
スマートフォン市場は2013年に、世界出荷台数が10億台に達し、39.2%の成長率で拡大を遂げた。しかし、2014年の成長率は19.3%にとどまり、さらに2018年にはわずか6.2%になる見込みだという。
こうした状況に対し、「現在、半導体チップメーカーや携帯電話機メーカーは、性能を上げることだけに注力している傾向があるが、今後予測される業界構造の変化に対して、準備ができているのだろうか」という疑問が浮かぶ。さらに重要なのは、こうしたメーカー各社は、これまでスマートフォンを使ったことがないユーザーを狙う低価格のスマートフォン市場においても、勝負するつもりなのだろうか。
スマートフォン売上高を価格帯別で見ると、低価格のスマートフォン市場の成長率が非常に高いことが分かる。ロイター通信の2014年2月26日付の報道によると、IDCのアナリストであるFrancisco Jeronimo氏は、「価格が100米ドル未満のスマートフォンの出荷台数は、2012年には4540万台だったが、2013年にはその3倍以上となる1億5900万台に達した。さらに、50米ドル未満のスマートフォンはそれを超える速さで成長を遂げ、2012年にはわずか90万台だった出荷台数が、2013年には1950万台にまで増加している」と述べている。
業界観測筋の多くは、スマートフォン市場が今後、大きく変化すると予測する。IDCでプログラムディレクタを務めるRyan Reith氏は、同社の四半期報告書に関するプレスリリースの中で、「スマートフォン市場は2014年に、大きな転機を迎えるだろう。同市場の成長は大幅に減速し、スマートフォンの普及をけん引する要素そのものが変化することになる。新たな市場が成長すれば、これまでとは異なる基準が生じる。スマートフォン市場全体の成長をけん引する要素として、付加価値の高さはもはや重要ではなくなるだろう」と述べている。
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