Bluetooth Low Energy(Bluetooth LE)を車載インフォテインメントシステムに導入する動きが注目されている。重いケーブルを張り巡らせる必要がなくなるれば自動車の重量を減らせる。また、歩きながらスマートフォンで自動車のキーを回すと、ドライバーの好みに合わせてシートが調節されるといった機能を実現できる可能性もある。
スマートフォンと自動車は、切っても切り離せない関係になってきている。この2つをつなぐ技術として、Bluetooth Low Energyが注目されている。
Bluetoothを使った自動車内でのハンズフリー通話は既に浸透している。だがBluetooth Low Energyを介して、自動車のドアや窓の開閉、シートやミラーの調整、ライトの制御をスマートフォンで行うシステムは、まだお目見えしていないのではないだろうか。
Texas Instruments(TI)は、Bluetooth Low Energy対応の車載向け製品を武器に、車載インフォテインメントの新たな動きの最前線に出ようとしている。車載ケーブルを無線に置き換え、スマートフォンで制御できるアプリを自動車に搭載するといった動きだ。
TIが2014年4月21日に発表した、Bluetooth Low Energy対応のSoC(System on Chip)「CC2541-Q1」は、まさにこうした用途を狙ったものである。CC2541-Q1は、車載機器の品質規格であるAEC-Q100にも準拠している。
自動車業界がBluetooth Low Energyに強い関心を持っていることは間違いない。スマートフォンで車載インフォテインメントシステムを制御するという“目新しさ”よりも、純粋に経済的な理由からBluetooth Low Energyを自動車に採用したいと考えているという。
TIの車載向け無線接続性ソリューション事業担当ディレクタであるRam Machness氏は、自動車メーカーがBluetooth Low Energyに関心を持つ大きな理由として、ケーブルの置き換えを挙げた。ケーブルがなくなるだけで、重量を数kg減らせるケースもあるそうだ。
さらに、ケーブルを取り付けるという複雑な作業からも解放される。コントロールユニットからエンドユニットまで、車内のあらゆる制御機構でケーブルを使う。ドアの開閉にもケーブルが必要だ。ケーブルの長さは車種やドアの左右によって異なる。「ケーブルがぶらんと垂れ下がった状態を好む人はいない。長さが合わずに使えなかったケーブルの在庫を抱える負担も想像してみてほしい」(Machness氏)。
Machness氏は、「ドアや窓、ミラーを制御するためだけでも、14本ものケーブルが使われている。自動車メーカーがこれらのケーブルの重量の削減に非常に苦慮していることに驚いた」と述べている。
ほとんどの自動車メーカーは、ミッションクリティカルではない制御機能にLIN(Local Interconnect Network)バスを使用している。LINバスを使う機能は制御データが少ないことが多いので、比較的Bluetooth Low Energyに置き換えやすいと考えられる。
Bluetooth Low Energyは、キーフォブやスマートフォンを介したキーレスエントリーにも適用できる。サブGHz帯を利用したキーレスエントリーシステムもあるが、Machness氏は、「Bluetooth Low Energyは消費電力が1μA以下と低いため、サブGHzと同様にキーレスエントリーに適した技術だ」と主張している。
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