建設現場において死亡事故が発生し、作業に遅延が生じたことなども、一部の主要な競技場において4Gの試験や導入を遅らせた要因となっている。ワールドカップの開催予定会場の建設現場で発生した事故では、これまでに8人が死亡している。直近では、2014年3月29日にサンパウロのスタジアムにおいて、臨時座席の設置作業中に、作業員1人が約8mの高さから転落して死亡した。同スタジアムではその数カ月前にも、屋根部分の500トンの材料を釣り上げていたクレーンが倒れ、作業員2人が死亡するという事故が発生している。このために、スタジアムのファサード(建物の正面デザイン)の完成が遅れている。
こうした度重なる事故による遅延で、建設期間が削られたため、サンパウロや、その約400km南に位置するクリティバ(Curitiba)の競技場では、4Gの導入が特定の戦略的エリアのみに限られることになる。一方、クイアバ(Cuiaba)やマナウス(Manaus)、ナタール(Natal)、ポルトアレグレ(Porto Alegre)などのスタジアムは、4Gの導入が間もなく完了する見込みで、2014年5月末の完成を予定しているという。
ブラジルの通信省大臣であるPaulo Bernardo氏は最近、議会聴聞会において、「サンパウロなどの一部のスタジアムでは、データサービスを拡充するための設備を設置する時間が足りない」と述べている。サンパウロのスタジアムでは、ブラジル対クロアチアの開幕戦が行われる予定だ。また同氏は、クリティバのアレナ・ダ・バイシャーダ(Arena da Baixada)スタジアムと、リオデジャネイロの約400km北に位置するベロオリゾンテ(Belo Horizonte)のミネイロン(Mineirao)スタジアムについて、「高品質のサービスを提供することは非常に難しい」と述べる。
Levy氏は、「これらの競技場において通信サービスを実現する上で、完成予定時期に問題が生じている。全競技場で、約300の小型基地局と小型アンテナを設置する必要があるため、120日間で屋内用通信サービスの設備を完成させるよう指示していた。大量の光ファイバを利用するため、アンテナの設置を急がなければならない」と述べている。
通信事業者各社は、屋内のWi-Fiインフラの負荷を軽減するために、無線基地局やローミング用の小型セルボックスを設置する計画だという。「COW(Cells On Wheels)」や「COLT(Cells On Light Trucks)」の名称で知られる、これらのロービング型マクロ基地局は、ブラジルでのF1(Formula One)レースや世界各国のスポーツイベントで既に広く使われている。Levy氏は、「通信事業者各社は、各スタジアムに基地局を3〜4台ずつ設置すると予想され、1試合中に利用される基地局数は120に上る見通しだ。さらに、作業区域やトイレ、ロッカールームなどスタジアム全体に小型基地局を設置することも計画されている」と述べている。
4G AmericasのCalaff氏は、「これは、トラフィックのピークに標準を合わせて、ネットワークインフラの敷設に多くの予算を割かずに済む、非常に戦術的な方法だ」と述べている。
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