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ワールドカップ開催迫るブラジルの通信インフラ事情整備が間に合わないかも?(2/5 ページ)

» 2014年05月20日 17時27分 公開
[Jessica Lipsky,EE Times]

 2013年の「FIFAコンフェデレーションズカップ」(ワールドカップのプレ大会)、2014年のワールドカップ、2016年のリオデジャネイロオリンピックという3つの大型スポーツイベントを利用して、4Gネットワークの導入を促進するのがブラジル政府の狙いだった。

 政府に対し、「地方の貧困層を犠牲にして都市部のエリート層を厚遇しようというのか」と懸念する声も上がっていた。しかし、ワールドカップ開幕の直前になって、技術上の障壁や、政府の官僚主義、4G導入を急ぐ中での建設作業の遅延など、政府の方策を疑問視する見方が強まっている。

ネットワークがクラッシュする恐れも

 業界団体である4G Americasで中南米地域担当ディレクタを務めるBob Calaff氏は、EE Timesの取材に対し、「政府は、空港やスタジアム、主要道路、主要都市などの公共の場への対応を重要視している。ワールドカップの観光客は、4G通信をある程度利用することはできるだろう。しかし都市部では、トラフィックによってネットワークがクラッシュする可能性がある」と述べている。

 米国の4G通信の周波数帯は3.5GHz帯であるが、ブラジルの4Gは2.5GHz帯を利用する。2.5GHz帯は通常、アジアや中東、欧州の一部などで使われている。ANATELは2014年8月、4G移動体通信向けとして700MHz(698M〜806MHz)の周波数帯を2回目のオークションにかける予定だとしている。通信事業者は、2×10MHzのブロックで入札することができるという。

 Calaff氏は、「トポロジーに関する課題が残るものの、通信事業者は全体的に、基地局の識別や選定など、さまざまな要素を組み合わせる必要があるようだ。さらに2.5GHz帯では、基地局の密度に対する物理的なサポートに限界がある。700MHz帯において、同程度のユーザー数に対して同レベルのサポートを提供するためには、基地局の数を2倍にする必要がある」と述べている。

 電気通信連合であるSinditelebrasilは、コンフェデレーションズカップ開催に向けた無線事業の進捗について、リポートを発表している。それによると、マラカナン(リオデジャネイロ)、ナシオナル(ブラジリア)、ミネイロン(ベロオリゾンテ)といった比較的大規模なスタジアムは、3Gの通信容量が平均2.8Gビット/秒で、1万4000人の同時通信をサポート可能だという。また、4Gのデータ転送速度は平均1.96Gビット/秒で、約9900人のユーザーを同時にサポート可能だ。さらに小規模なスタジアムでは、3Gのデータ転送速度が2Gビット/秒、4Gでは1.57Gビット/秒になるという。

 Sinditelebrasilのプレジデントを務めるEduardo Levy氏は、「100万人のサッカーファンがブラジルに来たとしても、通常のサービス全般に対する影響はほとんどないだろう。2013年のコンフェデレーションズカップでは、毎秒1.5台のスマートフォンが計3000万台、新たに接続されたが、ワールドカップではさらにデータ使用量が増加する見込みだ」と述べる。

 2013年のコンフェデレーションズカップでは、β版4Gと既存の3Gの検証が行われた。2014年6月のワールドカップでは、数百万台ものスマートフォンが追加接続されることになるため、通信事業者は通信容量について、より現実的に検討していく必要がある。

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