アジレント・テクノロジー(以下、アジレント)は、メンテナンス市場向けハンドヘルド型測定器の事業を強化する。この一環として日本アビオニクスと協業し、ハンドヘルド型赤外線サーモグラフィ製品を共同開発した。これとは別に、ハンドヘルド型絶縁抵抗計やリモートリンク製品も発表した。
アジレント・テクノロジー(以下、アジレント)は2014年6月3日、メンテナンス市場向けハンドヘルド型測定器の事業を強化すると発表した。この一環として日本アビオニクスと協業し、ハンドヘルド型赤外線サーモグラフィ製品を共同開発した。これとは別に、ハンドヘルド型絶縁抵抗計やリモートリンク製品も発表した。予測・予防メンテナンス市場における測定ニーズに応えていくのが狙いである。
ハンドヘルド型測定器の世界市場は約2000億円規模と予測されている。その代表的な製品が携帯型オシロスコープやデジタルマルチメータ、サーモグラフィ、絶縁抵抗計などである。主に電気設備やプラント機器、電子機器の修理やメンテナンスの用途に向けられてきた。これまでのトラブルシューティング向けに加えて、アジレントがハンドヘルド型測定器の新たな成長市場として注目しているのが、予測・予防メンテナンスの用途である。
アジレントの社長を務める梅島正明氏は、「EV/HEVやスマートグリッドなど、故障してから修理するのでは手遅れとなる用途が増えてきた。既存のハンドヘルド市場に隣接するこれらの市場で新製品の受注獲得を狙っていきたい」と話す。ベンチトップ型測定器市場で高いシェアを持っている強みも生かす。「ハンドヘルド型測定器を使って、システムの稼働状況を診断する。もし問題があれば多点データロガーやパワーデバイスアナライザといったデスクトップ型測定器を用いて、より詳細に検査することができる」という。
アジレントはこれまで、28製品のハンドヘルド型測定器を販売してきた。今回は「See More(より鮮明に)」、「Do More(より確実に)」、「Reach More(より遠くまで届く)」を狙いに、赤外線サーモグラフィ、絶縁抵抗計5製品、ワイヤレス接続用のディスプレイおよびアダプタ製品の合計8製品を新たに追加した。これら新製品は予測・予防メンテナンスに適した製品である。「予測・予防メンテナンスを十分に行っておけば、現在発生している故障案件の70%は回避できる」と同社は分析している。
日本アビオニクスとの協業で、共同開発した最初の製品がTrueIR赤外線サーモグラフィ「Agilent U5855A」である。解像度が160×120ピクセルのディテクタ素子を用いながら、320×240ピクセル相当の有効解像度を得ることができるという。「詳細は明らかにできない」と前置きし、「連続して撮影した複数のフレームを用いて、より鮮明な画像に仕上げる『ファインレゾリューション』技術により、従来品に比べて4倍の解像度が得られる」という。4倍のデジタルズーム機能も備えており、小さい傷も発見しやすくなった。温度分解能は0.07℃(30℃時)である。
解析機能も搭載している。イメージロギング機能は、一定の時間に非測定物のイメージを取り込み、時間経過に対する温度変化を確認しつつ、品質チェックや故障解析に有効な温度分布を表示させることができる。レポート作成などを容易に行うためのPC用ソフトウェアも用意している。この他、片手操作や長時間測定なども考慮したエルゴノミクス設計を採用している。
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