NANDフラッシュメモリを内蔵する全てのSSDに共通の特性として、SSDは使い始めると必ず性能が低下する。今回は、性能低下が起こる過程を見ていきたい。
PCのユーザーが初めてSSD(Solid State Drive)製品を購入し、PCに接続し、SSDを使い始めたとしよう。使い始めはハードディスク装置(HDD)との違いに驚くはずだ。まず、静かであることに驚く。音がまったくしないからだ(しばらくすると慣れてしまうが)。そして読み書きが高速であることにも驚く。感動的ですらある。
しかし、SSDを使っているうちに、こんな感想を抱いたことはないだろうか。「始めのころに比べると、最近は動作が遅く感じる」、「なんだか反応が鈍くなってきた」、「以前に比べると保存に時間がかかる」など。何かがおかしい。ひょっとして「ハズレ」に当たったのかも。
先に結論から述べよう。SSDは使い始めると性能が「必ず」下がる。これはNANDフラッシュメモリを内蔵する全てのSSDに共通の特性である。「アタリ/ハズレ」とは無関係だ。
ストレージとネットワークに関する業界団体SNIA(Storage Networking Industry Association)の技術文書によると、SSDは使用開始とともに、大きく3つの状態を経ていく。
1)開封後未使用(FOB:Fresh-Out-of-Box)状態
2)遷移状態(Transition State)
3)定常状態(Steady State)
「1)FOB状態」とはその名称の通り、SSDベンダーが出荷したSSDの梱包をユーザーが開封した直後の状態のことである。SSDが内蔵するNANDフラッシュメモリのメモリセルはすべて、消去(イレーズ)された状態にある。このFOB状態が、SSDの性能が最も高い。この状態でベンチマークソフトを実行すると、非常に良い値を得られる。
「2)遷移状態」とは、FOB状態のSSDにデータを保存していくことで、性能が低下していく状態を指す。SSDの使い始めとは、SSDにデータを保存することにほかならない。なぜなら、FOB状態のSSDにはデータが入っていないので、データを読み出すという使い方は、あまり起こらない。書き込み動作と読み出し動作の比率でみると、使い始めは書き込み動作の比率が大きくなる。
ここで性能が低下していく様子は、データを保存するパターンによって違う。ボリュームの大きなデータをいくつか保存していくときは、性能の低下は比較的ゆっくりである。全体のボリュームが同じでも、ボリュームの小さなデータを数多く保存していくと、性能は急激に低下する。
「3)定常状態」は、遷移状態の次に現れる。データ保存の繰り返しによる性能の低下がゆっくりとなり、性能がほぼ一定となった状態である。このときの性能の高さはデータ保存の履歴に依存する。FOB状態に比べると「1/2〜1/10」であり、定常状態の性能には大きなばらつきがある。
FOB状態のSSDが定常状態に落ち着くまでには、それなりの時間がかかる。データ保存の累積量がSSD容量の2倍前後に達すると、定常状態に落ち着くと言われている。ユーザーによってストレージの使い方は千差万別である。コンシューマ用途のクライアントマシンを想定すると、半年以内にSSD容量の2倍を超えるデータを保存するユーザーがいれば、2年を経てもSSD容量の半分しか保存していないユーザーもいるだろう。総じて言えるのは、データの保存量が少ないライトユーザーの方が、SSDの性能低下を実感する期間が長そうなことである。
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