毎年2月に米国のサンフランシスコで開催される半導体チップ関連の国際学会「ISSCC」。半導体のほぼ全ての分野をカバーしていて、200本の論文が発表され、約3000人が来場する。半導体業界にとって重要な学会であるISSCCについて、開催概要から分野別の注目テーマまで、徹底的にプレビューする。
「ISSCC(IEEE International Solid-State Circuits Conference)」(「アイエスエスシーシー」と呼ぶことが多い)は、半導体チップの研究開発成果が披露される、国際学会だ。米国や日本などはもちろんのこと、世界中の企業や大学などによる、最新の半導体技術が発表される。
半導体の研究開発コミュニティには、数多くの国際学会が存在する。そのほとんどは、特定の分野を対象にした学会である。例えばプロセッサであったり、メモリであったり、パワーデバイスであったりする。ISSCCがユニークなのは、半導体のほぼ全ての分野をカバーしていることだ。
半導体チップの大半は、用途があらかじめ決まっている。PC向け、スマートフォン向け、ゲーム機向け、医療機器向け、カーナビ向けといったハードウェアの違いの他、画像処理向け、音声処理向け、変復調処理向け、インバータ向けなどの機能の違いによって細かく区分けされる。
ISSCCで発表される半導体チップの多くは、製品化されたばかりか、あるいは、今後1年〜2年以内に製品化することを前提に開発されたもの。言い換えると、ISSCCで発表された半導体チップから、半導体が支えるさまざまなシステムの将来像が見通せるのだ。
半導体の研究開発をけん引するのは、その時代で最も変革の激しいシステムである。現在、その代表はスマートフォンとサーバだろう。もちろん、これら以外のシステムも常に進化している。その進化を支えるのが、新たに開発される半導体チップなのである。新たに開発される半導体チップの一部は、ISSCCで公表される。だから、ISSCCに参加することで、システムの将来像を見通す手掛かりとなる情報を得られるのだ。
ISSCCでは、約200本の論文が講演形式で発表される。ISSCCでの発表を目指して投稿される論文の件数は約600本。つまり、2/3は選考段階で落選する。言い換えると、ISSCCで発表された研究開発成果には、一定の評価が与えられる。
ISSCCに参加する人数は、発表件数よりもはるかに多い。年度によって変動するものの、おおよそ3000人前後が参加している。この人数は、発表件数の15倍に相当する。この数字から分かるのは、発表目的の参加者ではなく、聴講目的の参加者が大半を占めるということだ。情報収集の場としての、ISSCCの重要度がうかがえる。また半導体関連の国際学会では、ISSCCの参加者数は世界最多である。
ISSCCは、毎年2月に米国のサンフランシスコで開催される。会場はサンフランシスコのダウンタウンにあるマリオットホテル(San Francisco Marriott Marquis)となっている。最近はずっと、会場はMarriott Marquisで固定されているようだ。したがってISSCCに何度か参加しているエンジニアにとっては、おなじみの場所となっている。
幸いというべきか、ISSCCの参加者は、会場ホテルのSan Francisco Marriott Marquisに割安料金で宿泊できる。来年(2015年)2月開催のISSCC2015の場合、1泊249米ドル(シングル/ダブル、税・サービス料別)である(2014年11月29日調べ)。
割安とは言うものの、249米ドル(実際には税金などが加わるので270〜280米ドル)という金額は安くない。このため、宿泊料金が安い、会場周辺のホテルに宿泊する参加者が少なくない。といってもサンフランシスコはホテルの料金が全体的に高額であるので、ホテル予約のWebサイトを駆使して良いホテルを早めに探すことをお勧めする。
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