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「日本の製造業を再び世界一に」、アナログ・グルが語るアナログ設計(1/3 ページ)

極めて優秀なアナログ回路技術者で「アナログ・グル」と呼ばれる日米4人の技術者が一堂に集まり、設計者が知っておくべきアナログ回路の特性や基本的な設計手法などについて語った。

» 2014年12月10日 11時25分 公開
[馬本隆綱EE Times Japan]

 「第2回アナログ・グルとの集い〜日本の電子産業を強くする技術とは〜」と題したセミナーが2014年12月5日に東京都内で開催された(主催:リニアテクノロジー)。前回(2013年)に続き「アナログ・グル」(極めて優秀なアナログ回路技術者を指す呼称)と呼ばれる、日米の技術者4人が、アナログ技術に関する課題や、回路設計時に考慮すべきポイントなどについて語った。本稿では、Linear Technologyの創設者の1人で、CTO(最高技術責任者)兼エンジニアリング担当副社長を務めるRobert Dobkin氏と、同社の副社長でパワー製品担当ゼネラルマネージャを務めるSteve Pietkiewicz氏がそれぞれ行った2つの講演について、その概要を紹介する。

デジタルとアナログで異なる進化

 これまでの30年間で、デジタル技術は大きく進化してきた。当時のスーパーコンピュータの処理性能が、現在はスマートフォンで実現されるようになった。デジタル技術の進歩と同様に、アナログ技術も進化している。しかし、半導体チップの進化で見れば、デジタル技術とアナログ技術ではその進化の内容が大きく異なる。

 デジタル回路の半導体チップが線幅を微細化することで性能を向上させ、シリコンウエハーを大口径にすることでコストダウンを図ってきた。その結果が民生電子機器などへの用途拡大と、機器の小型化や低消費電力化、飛躍的な性能や機能向上などに貢献してきた。これに対してアナログ回路を主体とした半導体チップは、耐圧やノイズなどの問題もあり、微細化や大口径化で簡単に対応することが難しい。技術的進化はアナログ・グルと呼ばれる、極めて優秀なアナログ設計技術者の頭脳に頼っていることが多い。

 ところがアナログ設計技術者は、これまでの30年間で激減したといわれている。これからも、デジタル技術が進化するスピードにアナログ技術が追従していくためには、優れた人材の確保がカギを握る。今回の講演でも、「日本の製造業が再び世界一となるには、これから多くのアナログ・グルを育成していかなければならない」といった意見が出された。

 講演会ではまず、群馬大学大学院で理工学府電子情報部門の教授を務める小林春夫氏が、整数論の工学応用について講演。フィボナッチ数列を用いたSAR(逐次比較)型A-Dコンバータや、魔方陣レイアウト技術を用いたD-Aコンバータなどを紹介した。また、米Linear Technologyでデザインマネージャを務める河本篤志氏が、INL(積分非直線性)誤差が標準で0.5ppmと小さい20ビット分解能のSAR型A-Dコンバータについて、その特長や設計のポイントなどを紹介した。

講演した群馬大学大学院で理工学府電子情報部門の教授を務める小林春夫氏(左)と、米Linear Technologyでデザインマネージャを務める河本篤志氏
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