基調講演でYoon氏は、QualcommやIntel、Appleといったライバル企業が提唱するIoTエコシステムと競う可能性については言及しなかった。代わりに、Samsungがオープンエコシステムの実現に向けて構築したパートナーシップや買収について語った。
その1つに、Samsungが2014年8月に2億米ドルで買収した、米国のSmartThingsがある。SmartThingsは、モバイルアプリケーションを使ってコネクテッドデバイスを操作する技術の開発を手掛ける新興企業である。
SmartThingsのCEOであるAlex Hawkinson氏は、買収以降にSmartThingsが開発した技術の進展について説明するようYoon氏から促され、「SmartThingsの製品は全てSamsungのコネクテッドデバイスに対応している」と述べた。
JawboneのCEOを務めるHosain Rahman氏は、「SmartThingsは、当社にとって大本命の開発メーカーだ。今後統合が進んでいけば、さらに多くの技術を提供できるようになる。ユーザーを中心としたコネクテッドワールドの構築に向け、道が開かれるだろう」と述べている。
豊富な資金や市場シェアを意のままにすることが可能なSamsungにとって、オープンエコシステムにおいてパートナーシップや協業関係を構築するのは簡単なことだろう。Yoon氏によるとSamsungは、開発メーカーや新興企業との協業によって自社のIoTプログラムを強化すべく、1億米ドルを投入する予定だという。
Samsung独自の世界観に基づいた「オープンエコシステム」の定義に関しては、ここでは触れないでおくとしても、「業界は今や、IoTの無限の可能性を解き放とうとしている」というYoon氏の主張については、意外にも内容が薄く、表面的なものであるといえるのではないだろうか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.