スイスのローザンヌ連邦工科大学(EPFL)が、電子脊髄「e-Dura」を開発したと発表した。伸縮性のあるシリコンを使い、コネクタと電極を金の配線で接続して電子追跡機能を持たせた。パーキンソン病やてんかんの治療にも応用できるのではないかと期待されている。
脊髄を損傷してしまうと体にまひが生じ、それを治すことは不可能だとされている。スイス ローザンヌ連邦工科大学(EPFL:Ecole Polytechnique Federale De Lausanne)の研究が、これを変えるかもしれない。
EPFLの科学者グループは2015年1月8日(現地時間)、伸縮自在で曲げることも可能な電子脊髄「e-Dura」を開発したと発表した。損傷を受けた脊髄の治療に適用すれば、まひを治すことができると期待される。
EPFLは現在のところ、ラットを使った臨床試験においてまひを治療することに成功している。今後、人体による臨床試験へと進み、近いうちに製品化したい考えだ。脊髄損傷を患う患者数は、米国国内だけでも約25万人に達するという。
これまでにも、まひの治療向けとしてさまざまな人工神経が開発され、臨床試験が行われてきた。しかしこれらは、周囲組織との摩擦によって炎症を起こし、最終的には拒絶反応が生じてしまうことから、限られた短い期間しか使うことができなかった。EPFLが今回開発したe-Duraは、柔軟性に優れ、曲げることも可能なため、炎症や拒絶反応を起こすことなく永久的に埋め込むことが可能だ。まひのあったラットにこのe-Duraを移植したところ、わずか数週間で再び体を動かせるようになったという。
EPFLの科学者であるStéphanie Lacour氏は、e-Duraを紹介する映像の中で、「神経移植は、損傷を受けた神経系を安定化させるための治療として行われている。現在、複数の技術が存在するが、いずれも最終的に、移植側の炎症や拒絶反応を引き起こしてしまう。しかし、今回われわれが開発したe-Duraは、周囲組織と同じように柔らかく、自在に伸縮が可能だ。電気的刺激と化学的刺激とを組み合わせながら、優れた弾力性を維持することができる」と語っている。
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