災害発生時などの人命救助の場において、昆虫をラジコンのように遠隔操作して生存者を捜索する、という時代が来るかもしれない。米国とシンガポールの研究チームが、ハナムグリという昆虫の飛翔筋を無線でコントロールし、飛行を自在に操る技術を開発した。
米国とシンガポールの研究チームは、昆虫のハナムグリ(ガよりも大きい)の飛行を無線で制御する研究を共同で行っている。小さなバックパックのようなモジュールをハナムグリに背負わせ、ハナムグリの飛翔筋をコントロールすることで、飛行を自在に操るというものだ。
研究者らが掲げた目標は、国防総省国防高等研究事業局(DARPA)のRobotics Challengeと同様、自然災害後の生存者を捜索することだが、ロボットと遠隔操作の昆虫には軍事用を含め、他にも多くの用途が見込まれている。
ハナムグリの体重は約8g。モジュールの重さは1.5gだ。モジュールはマイコンと無線通信チップ、3.9Vのリチウム電池の他、6個の電極を搭載している。これらの電極は、視葉(視覚情報を処理する脳の一部)や飛翔筋に接続されている。モジュールとの無線通信は、1000Hzの周波数で行われる。
プロジェクトの米国チームを率いるMichel Maharbiz氏は、「災害救援に小さな昆虫の群れを用いるというアイデアを考え続けてきた。例えば、昆虫にシンプルな温度センサーを搭載させて、がれきの中を巡回・飛行させるといった方法だ」と述べている。同氏は米国カリフォルニア大学バークレー校の電気工学およびコンピュータサイエンス部の准教授で、この研究の主任調査官でもある。
実際、米軍は第二次世界大戦以降、動物を遠隔からコントロールして監視用のマイクを運ばせようとしてきた。だが、そういったコントロールが可能なほどエレクトロニクス技術が洗練されたのは、20世紀に入ってからだった。
無線チップやプロセッサ、センサー、アクチュエータなどを超小型/軽量のモジュールに集積できるようになった今、昆虫の飛行をコントロールする技術は、大きく進歩している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.