NTTなどは2015年3月、ダイヤモンド中に閉じ込められた電子スピンに超電導磁束量子ビットを結合させることで、ダイヤモンド中の電子スピンの寿命が約10倍に伸びることを「世界で初めて示した」と発表した。開発した理論により量子センサーの感度を10倍程度高められるという。
NTTと国立情報学研究所、大阪大学、情報通信研究機構は2015年3月、ダイヤモンド中に閉じ込められた電子スピンに超電導磁束量子ビットを結合させることで、ダイヤモンド中の電子スピンの寿命が約10倍に伸びることを「世界で初めて示した」と発表した。
今回の成果により、ダイヤモンド中の電子スピンを使って、ナノスケールの物質構造などを高精度でイメージングする「量子センサー」の感度を「桁違いに向上できる」(4者)という。
材料工学や医療分野では、物質の持っている磁場、電場、温度など高精度で検出するセンサーが求められる。その中で、既存のセンサーの感度と空間分解能を上回るとされる量子センサーの開発が進められている。量子センサーを実現する手法として、ダイヤモンド中の電子スピンの応用が有力視されている。ダイヤモンド中の電子スピンは、マイクロ波の印加によりその方向を制御して量子的な重ね合わせ状態を生成することができ、光を照射することで方向の読み出しもできることや長寿命であるという利点を持つ。また、数十nmという極小ダイヤモンドで電子スピンを作ることができることから局所的なセンシングが可能になるとされ、量子センサーへの応用が見込まれているのだ。
ただ、一方で、ノイズが存在する環境下では寿命が短くなることから十分な計測時間の確保ができず、センサーとしての感度が劣化するという問題点を抱え、電子スピンの寿命を延ばす技術が求められていた。
NTTなど4者からなる研究チームは、100μ秒程度の寿命を持つダイヤモンド中の電子スピンと、10μ秒程度の単寿命の超電導磁束量子ビットを結合させるハイブリッド化により、電子スピンの寿命が950μ秒と10倍程度延びるという現象を理論的に見いだしたという。電子スピンの寿命が約10倍に延びたことは、量子センサーとしての感度も約10倍程度向上することを意味する。
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