今回は、回路の遅延時間を左右する要因について紹介する。例えば、コンタクト抵抗、しきい電圧、電源電圧、温度などがある。しきい電圧と温度、電源電圧と温度が遅延時間に与える影響はかなり複雑だが、その対処法として、DVFS(Dynamic Voltage and Frequency Scaling)技術が挙げられる。
トランジスタやコンタクト、金属配線などの寄生素子である「抵抗(R)」と「静電容量(C)」は、回路の遅延時間を大きく左右する。微細化が進むと、これらRとCの変化が遅延時間に与える影響が変化する。
例えばコンタクト抵抗である。28nm世代の回路では、コンタクト抵抗が2倍に増えたときに遅延時間は4%ほど長くなった。これが7nm世代の回路になると、コンタクト抵抗が2倍に増えたときの遅延時間の増大は、約9%に悪化する。遅延時間の増加を4%に抑えるためには、コンタクト抵抗の増大を1.5倍にとどめておかなければならない。
コンタクト抵抗の影響は、物理的なレイアウトによっても変わる。例えばインバータ回路である。最も小さなレイアウトの場合、1個のトランジスタの電流を1個のコンタクトが引き受ける。ところがゲートピッチを増やして電流駆動能力を高めたレイアウトだと、1個のコンタクトが2個のトランジスタの電流を受け持つことになる。コンタクト抵抗が増加することによる信号電圧への影響は、2倍に増える。
トランジスタのしきい電圧(VTH)と温度が遅延時間に与える影響と、電源電圧(VDD)と温度が遅延時間に与える影響は、かなり複雑な様相を呈する。第1世代のFinFETの事例を、ARMはスライドで見せていた。
電源電圧(VDD)を一定にしてしきい電圧(VTH)を変えると、遅延時間の温度依存性が大きく変化する。あるしきい電圧だと、低温では遅延時間が長く、高温では遅延時間が短くなる。ところが別のしきい電圧だと、低温では遅延時間が短く、高温では遅延時間が長くなる。しきい電圧の違いにより、逆の温度特性を示すようになる。
しきい電圧(VTH)を一定にして電源電圧(VDD)を変えると、この場合も遅延時間の温度依存性が大きく変化する。温度上昇によって遅延時間が短くなるVDDと、逆に温度上昇によって遅延時間が長くなるVDDがある。4通りのVDDで温度特性を調べると、遅延時間が最大になる温度は−40℃、+25℃、+65℃、+125℃と4通りになる。
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