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有機薄膜太陽電池で変換効率10%を達成、実用化に大きく前進エネルギー技術 太陽電池(1/2 ページ)

理化学研究所(理研)創発物性科学研究センター創発分子機能研究グループの尾坂上級研究員らによる共同研究チームは、半導体ポリマーを塗布して製造する有機薄膜太陽電池(OPV)で、エネルギー変換効率10%を達成した。同時に、変換効率を向上させるための分子構造や物性、分子配向と素子構造の関係などについても解明した。

» 2015年06月04日 17時30分 公開
[馬本隆綱EE Times Japan]

 理化学研究所(理研)創発物性科学研究センター創発分子機能研究グループの尾坂格(おさか・いたる)上級研究員らによる共同研究チームは2015年6月、半導体ポリマーを塗布して製造する有機薄膜太陽電池(OPV)で、エネルギー変換効率を10%まで向上することに成功した。同時に、変換効率を向上させるための分子構造や物性、分子配向と素子構造の関係などについても解明した。

 今回の研究は、尾坂氏や同じく瀧宮和男グループディレクタのほか、北陸先端科学技術大学院大学の村田英幸教授、バルーン ボーラ博士研究員、および高輝度光科学研究センターの小金澤智之研究員らの共同研究チームによって行われた。

 OPVは、軽量で柔軟性があり、半導体ポリマーを塗布することで作成することができる。このため、一般的なシリコン太陽電池に比べて、製造コストが比較的安価で大面積化が可能といった特長がある。しかしながら、実用化に向けては太陽光エネルギーを電力に変換する効率が低く、研究課題の1つとなっていた。

発電層の厚みを2倍に

 共同研究チームは、これまで理研の研究チームが開発してきた、結晶性の高い半導体ポリマー「PNTz4T」を用いたOPV素子をベースに、発電層や素子構造を改善した。具体的には、半導体ポリマーとフラーレン誘導体を混合して作製した発電層の厚みを約300nmした。従来の2倍に厚くすることで電流密度が大幅に増大し、変換効率が従来の約6%に対して、8.5%程度まで向上することが分かった。その上、従来のOPV素子の陽極と陰極の配置を入れ替えた逆構造素子を適用したところ、変換効率を10%まで高めることに成功した。

PNTz4Tを発電層として用いたOPV素子の電流・電圧特性を示したグラフ (クリックで拡大) 出典:理化学研究所
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