半導体業界の再編が加速している。2015年だけで、既に複数の大型買収案件が報じられた。この動きはまだ続く可能性が高い。6月1日にAlteraの買収を発表したIntelだが、これ以上の大型買収劇はあり得るだろうか。例えば、Qualcommとの統合の可能性を検証してみたい。
半導体業界では、統合・再編が盛んに行われている。2015年6月1日(米国時間)には、IntelがAlteraの買収を発表した*)。このニュースも最近の半導体業界によくみられる巨大企業同士の統合の1つだと捉えられている。
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こうした動きが進む中、業界最後とも言える大きな統合の可能性が、他に残っているだろうか。
可能性の1つとして検証してみたいのが、IntelとQualcommの統合だ。これが実現すれば、半導体業界最後かつ最大級の統合になるかもしれない。これ以上に大規模で重要な統合は他にはないだろう。
IntelとQualcommの統合は、さまざまな点で理にかなっている。Intelは、データセンターからノートPCまで幅広いコンピューティング技術を有しているが、スマートフォン市場では確固たるポジションを確立できていない。一方、Qualcommは、スマートフォン市場で実績を築いているが、スマートフォンと並んで現在の巨大成長市場であるクラウドコンピュータの分野では、実質的な見通しが立っていない。
両社が統合すれば、コンピューティング市場を網羅したリーダー企業が誕生することになる。Intelは、モバイルやIoT分野へのx86系プロセッサの投入を目指してきたが、採算を取れずにいる。Qualcommと統合すれば、損失を重ねるだけだったこの取り組みから手を引くことができる。一方のQualcommは、ARMベースのサーバ向けSoCを設計しているが、将来的にシェアを拡大できる見通しは低い*)。Intelとの統合によって、同事業を終了するか、少なくとも規模を縮小することが可能となる。
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Intelは、同社の製品とQualcomm Atherosの製品を統合することで、Wi-Fi部門を合理化することもできる。Intelの無線チップ製品とQualcommのLTE製品の統合は、Wi-Fi部門の統合と比べると実現性は低いかもしれないが、コスト削減は期待できる。
さらに、IntelとQualcommは、組み込み市場で幅広い相乗効果を持っている。例えば、x86とARMを統合した通信チップを作ることも可能だ。だが、この分野(x86とARMの統合)を狙うAMDにとっては、IntelとQualcommの統合は悪夢のようなシナリオになる。
結局は、両社がもし統合すれば、Intelが世界最大の半導体メーカーとしてのポジションを強化するだけになるのではないだろうか。Qualcommの事業は、10nmプロセス、7nmプロセス、5nmプロセスに備えてIntelが既存の製造工場を拡張するのを助ける形になるだろう。こう考えると、両社の統合は、Intelがファウンドリ事業のライバルであるSamsung ElectronicsやTSMCに対抗するための手段になる可能性が高い。
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