もちろん、この巨大統合が実現しない理由もたくさんある。
まず、財務面での調整が困難だろう。両社の企業文化も異なる。また、Intelは独占禁止法に違反したとして、欧州や韓国、米国で提訴され、数多くの訴訟を抱えている。こうした状況を考慮すれば、両社の統合によって規制当局による監視がさらに厳格化することも予想される。さらに、中国における課題もある。
中国におけるIntelの印象は、よいようだ。Intelは、大連の製造工場(フル稼働はしていない)に多額の資金を投入しているし、モバイル機器向けのチップセットを開発している中国のSpreadtrum Communicationsにも、15億米ドルを投資している。ただ、そのどちらにもあまり明るい未来は期待できない。
Intelは、大連でビジネスを続ける理由を探さなくてはならないだろう。この点に関しては、SpreadtrumがIntelの14nmプロセスを使いたがっている。だがSpreadtrumが製造したいのは、x86系ではなくARMベースの製品だ。
Qualcommは、独占禁止法に違反したとして中国から罰金の支払いを命じられている*)。同社の中国におけるイメージは、“特許使用料を巻き上げていた米国のメーカー”になってしまった。特許使用料の問題は落ち着いたが、Qualcommと中国はお互いによい印象は持っていないだろう。
*)関連記事:中国がQualcommに独禁法違反判決、特許使用料はどうなる?
半導体業界では、他にも統合・買収の可能性が考えられる。1つは、GLOBALFOUNDRIESかTSMCが、UMCを合併する可能性。もう1つは、Texas Instruments(TI)が、アナログ半導体メーカーの買収を考えている可能性だ。Analog Devices(ADI)、ON Semiconductor、さらにはMaxim IntegratedやLinear Technologyなどがここに絡んでくるかもしれない。だが、これらの半導体メーカーは経営状態がよく、専門性の高い製品群が多いので事業規模の縮小はあまりないだろう。
さらに、東芝、ルネサス エレクトロニクス、ソニー、シャープ、富士通、パナソニックといった日本企業の大手半導体メーカーの今後の動きにも注目したい。欧州では、特に大きな動きはしばらくなさそうだ。
以上は全て、筆者の見解だ。皆さんは、どうお考えだろうか。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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