パナソニックは薄くて高性能な断熱材「NASBIS(ナスビス)」を開発し、2015年6月から量産を開始した。スマートフォン(スマホ)やウェアラブル機器の熱対策部品として、熱源のピーク温度を低減するだけでなく、同社の高熱伝導のグラファイトシートと組み合わせて使用すれば、放熱の方向制御もできる。
スマートフォンの熱問題を、わずか100μmという薄さのシートが解決してくれるかもしれない――。
スマートフォンユーザーなら誰しも経験するであろう、スマートフォンが発する熱。実際、スマートフォンの熱が原因で低温やけどを負ったという事例もあるほどスマートフォンは熱を帯びる。スマートフォンでゲームを楽しんでいたら、熱くなったスマートフォンの電源が突然、落ちたという経験をしたユーザーも多いだろう。
パナソニックは、厚さ100μmの断熱シート「NASBIS(ナスビス:NAno Silica Balloon InSulator)」を開発し、2015年6月から量産を開始した。これまで数mm以上の厚さが必要だったことで断熱シートの搭載が難しかったスマートフォンやウェアラブル機器への搭載を見込んでいる。
NASBISは繊維とエアロゲルを複合化させたシート断熱材である。エアロゲルとは、シリカのナノ多孔体で、空気が動きにくく熱が伝わりにくい。固体の中で熱伝導率が最も低い物質である。パナソニックは、以前からエアロゲルを製造する技術を持ち、繊維と合わせて均質なシートを作る、独自の製造プロセスを開発した。
一般的に利用されている断熱材は、住宅などに利用されるウレタン、冷蔵庫に使われる真空断熱材などがある。いずれも数mmから数cmの厚みだ。しかし、NASBISは独自の製造プロセスで、厚さ100μm、低熱伝導率0.02W/mKを実現した。これは、同社によると、業界最薄、トップクラスの低熱伝導率だという。
NASBISは、押圧による熱伝導率の変化も少ない。スポンジシートのような発砲シートでは、押圧が掛かると変形してしまい、性能が低下していた。ナノ多孔体を持つNASBISは孔が潰れることなく、安定した熱対策を行うことができるという。
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