Renesas Synergy MCUとしては、動作周波数が最大32MHzの「S1」から、同100MHzの「S3」、同200MHzの「S5」、そして同300MHzの「S7」と、4シリーズを用意していく。CPUコアにはARM Cortex-M0+コアあるいはARM Cortex-M4コアを搭載する。これらのシリーズ展開によって、バッテリ駆動機器からハブ機能を備えたハイエンドの機器まで、同一のCPUアーキテクチャで幅広い用途に対応できる拡張性と互換性を提供する。内蔵する周辺機能について、現時点で詳細を明らかにしていないが、IoT機器向けに多目的で利用可能な機能を搭載する予定だ。
この他、Eclipseをベースとした統合ソリューション開発環境(ISDE)は、GNUあるいはIAR SystemsのCコンパイラに対応している。開発キットやスタータキットを利用することで、アプリケーション開発を迅速に行うことができる。また、最終製品の開発事例もアプリケーションノートとして回路図などの情報を用意して提供する。
さらに、ユーザー登録すれば、「ギャラリ」と呼ぶクラウド上のソフトウェアライブラリから、Renesas Synergyプラットフォームに準拠した通信用プロトコルスタックや制御アルゴリズム、セキュリティソフトウェアなどをダウンロードして利用することが可能である。
ルネサス エレクトロニクスで、第2ソリューション事業本部事業計画統括部グローバルMCUソリューション部の部長を務める中沢勝彦氏は、IoTシステム開発者が直面している課題として3点を挙げた。「アイデアを早期に市場に投入する」、「TCOの最適化」、そして「市場参入に対するバリア(コストや労力)を下げる」ことである。これらの課題を解決する手法としてRenesas Synergyプラットフォームを提供していくことにした。
その一例として、組み込みシステム開発工程における工数の短縮を挙げた。一般的に組み込みシステムを開発する工程は、「ハードウェア設計」、ドライバソフトウェアやミドルウェアの設計、RTOSの実装など、「基本的なシステムコード開発」「アプリケーションコード開発」、「システムテスト」などがある。Renesas Synergyプラットフォームを活用することで、基本的なシステムコード開発の時間を大幅に短縮することが可能となる。
開発期間は、開発する内容や開発者のスキルによって異なるが、「従来の組み込みシステム開発に要する期間(時間)が1年〜1年半だとすれば、Renesas Synergyプラットフォームを活用することで、ほぼ半分〜2/3に短縮することが可能となる」(中沢氏)と試算する。特に、USBドライバの開発やRTOSの組み込みといった、MCU周辺のセットアップに多くの時間を費やすことが多いという。短縮できた期間分のコストを節減することができる。短縮できた期間を、製品差異化のためのソフトウェア開発に向けることも可能である。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.