野球ボールサイズのてまり型スパコンが2030年に登場するのか。電子回路LSIの限界を超えるための技術として、シリコンフォトニクス技術が注目されている。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は「光エレクトロニクスシンポジウム」で、その可能性の一端を紹介した。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2015年6月16日、「光エレクトロニクスシンポジウム」を東京都内で開催した。シリコンフォトニクス技術を用いた基盤技術の確立を目指した開発プロジェクトの概要やその進捗状況、野球ボールサイズ(てまり型)スーパーコンピュータへの期待などについて紹介した。
NEDOは、情報通信機器の省電力化と高速化を目的に、シリコンフォトニクス技術の確立に向けて、2013年度より「超低消費電力型光エレクトロニクス実装システム技術開発」プロジェクトに取り組んでいる。今回のシンポジウムは、学術的な成果発表というよりも、シリコンフォトニクス技術が社会に及ぼすインパクトなど、光エレクトロニクス分野の可能性や有用性などを広く知ってもらうために開催した。
本稿では、同プロジェクトのリーダーを務める東京大学教授の荒川泰彦氏と、技術研究組合光電子融合基盤技術研究所(PETRA)の専務理事を務める藤田友之氏の講演を中心にその概要を紹介する。
荒川氏は「シリコン光電子融合技術の現状と展望」と題して、光I/Oコアの開発および革新デバイス技術の研究開発などを中心に、担当するプロジェクトの概要について講演した。さらに、将来展望として2030年に実現されるとみられる野球ボールサイズスーパーコンピュータのイメージとそれが社会に与えるインパクトなどに触れた。
まず、超低消費電力型光エレクトロニクス実装システム技術開発プロジェクトの目標について、「演算性能や消費電力の点で大きな課題を抱えている現行の電子回路LSIの限界を突破するオンチップサーバ機能の実現」と話す。この限界を乗り越えていくための技術として注目されているのが光配線技術である。同プロジェクトでは、ハードウェアに加えて、ソフトウェアやアーキテクチャを含めた開発を行うとともに、アプリケーションに展開する可能性なども視野に入れている。2021年度末には光電子集積サーバボードのデモ実証を目指している。
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